179 / 229

第180話

いつものように、帰ってきたお義父さんと交代して家路につくと、珍しく日向がもう帰ってきていて、食事の用意をしてくれていた。 「あっ、日向!ただいま。 今日早かったんだね。ごめん、もう用意してくれてたの?」 「あぁ。たまにはいいだろ?お前に負担ばかりかけてるから。」 「負担だなんて…僕はそんな風に思ったことはないよ。」 「…瑞季…ありがとう。」 労わるようにそっと抱きしめられて、思わず泣きそうになるのを必死で堪えて、その広い背中に手を回して抱きしめ返す。 とくとくと規則正しく打つ心臓の音を聞いていると『生きている』という思いが 強くなり… 「日向…」 「ん?どうした?」 首を振ってぎゅうっと抱きつく僕を 日向はただただ抱きしめてくれていた。 「さ、冷めないうちに食べてしまおうか。」 優しい声音の日向の言葉に僕は微笑んで頷くと、さりげなく目尻の涙を拭いキッチンへ向かった。

ともだちにシェアしよう!