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第194話

日向は無言で車を走らせた。 僕が、運転する日向の腿にそっと手を置くと、日向はぎゅっとその手を握り返して来た。 けたたましいサイレンの音が止まり、時間外のドアから搬入される涼香ママの側に駆け寄ろうとした時、先に降りていたお義父さんが、僕達を見つけて首を横に振った。 嘘…嘘だ… 日向が僕を抱き寄せ、肩をぎゅっと抱いた。 急いでお義父さんのところへ駆け寄る。 案内されて三人で手術室へ急ぎ走る。 「今…ここへ来る途中で旅立ったんだ。 人工呼吸もAEDもダメだった。 延命も『無理です』って言われたよ… 急いで()てもらうけれど…もう…涼香は…逝ってしまった… もう、これ以上…苦しい思いをさせたくないんだ… 最後に微笑んで…俺に『臣さん、愛してる』って言って。 意識はもうなかったのにな。 涼香らしい最後だったよ。 二人とも本当にありがとう。 瑞季君、君には本当に世話になった。 涼香も喜んでたよ。君でよかった。 あぁ、朝陽と…涼香の両親にも連絡しないとな。」 随分前から覚悟していたお義父さんは、涙目で…それでも毅然としていた。 間もなく手術室から出てきたドクターは首を横に振り、 「ご愁傷様です…奥様、随分頑張られましたね…ご家族様も本当にお疲れ様でした。」 労いの言葉を残して去って行った。 その場に泣き崩れる僕を日向が支えてくれ、お義父さんは涙を堪えるように天井を仰いだ。

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