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第197話
お義父さんはノートを抱きしめ滂沱と流れる涙を拭いもせず、ただひたすら泣きに泣いていた。
僕も…涙が流れるに任せて…泣いた。
「親父…」
お義父さんの震える肩にそっと手を置いたのは日向だ。
「お袋の言う通りにしてやろう。
ド派手になるぜ、バラの花だよ。999本だって!
いいじゃん、辛気臭いより、華やかに送ってやろうよ。
…来世も会いたいなんて、すっげーよな。
やっぱりあの人、規格外だよ。」
ノートには、どこで調べたのかお義父さんの幼馴染の花屋の連絡先が書いてあり、電話をかけると、涼香ママから頼まれていたからと、あっという間に手配をしてくれた。
葬儀屋さんも連絡をすると担当者がすぐに飛んで来てくれた。
「この度はご愁傷様でございます。
余命宣告を受けられてから、内緒ですぐに打ち合わせにお見えになって、お支払いもいただいております。
遺影から会場やお返しの品まで、全て決めていかれたんですよ。
祭壇の花も『お寺さんに了解取るから絶対ね』って仰って…
三カ月を過ぎてからは、月に一度必ずお電話を下さっていました。
『この世でやり残したことがあるから、まだお呼びが来ないのよ。もう少し待っててね。』って。
…お見事な奥様でした。」
菩提寺の和尚さんからも連絡があった。
「戒名も、もう決まっているから。
祭壇の花の件は私が了承したから心配しないように。
なんともまあ、肝っ玉の据わった奥様でしたなぁ。」
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