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第202話
お義父さんの喪主挨拶は、二人の馴れ初めからエピソードを織り交ぜ、愛情と感謝に溢れるものだった。
涼香ママのことを本当に愛していた…いや、今でも愛してるというのが言葉の端々に散りばめられ、お義父さんの今の気持ちを思うと胸が痛くて辛くなった。
その中でさらりと『三人目の息子だ』と僕のことにも触れてくれた。
滞りなく通夜の儀が終わったが、すすり泣く声が会場の中に溢れ、焼香の人の列がなかなか引いていかない。
わざわざ足を運んでくれた名も知らぬ人達へ、感謝の意を込めて黙ってひたすら頭を下げ続ける…
「…日向君、瑞季君…」
聞き慣れた遠慮がちな声に顔を上げると、翔さんと智君、峰君と秋山君が…
見知った顔にホッとしたのか、ぶわっと涙がまた溢れてきた。
「…お母さんもご家族も本当に最後まで頑張ったね。
どうか安らかにと祈るばかりだよ。」
「こんなに愛されたお母さんは幸せだったと思う。
どうか気を落とさずに…と言っても無理だと思うけど…元気出して。」
「ご愁傷様です…どうかお気落としのないように…」
「何か力になれることがあったら言ってくれよ。」
口々に弔いと労いの言葉をかけられて、僕は頷くことしかできなかった。
その後すぐ片岡課長と、まーちゃん課長に率いられたアマゾネス二課の面々が現れた。
何と高木部長まで!
優しいみんなの顔を見たら涙が溢れて止まらなくなった。
僕に代わって日向は自ら進んで会社やみんなに迷惑をかけていたことを謝罪してくれ、お別れに来て下さったことに感謝して丁寧に挨拶をしてくれた。
後で聞いた話によると、日向の旦那っぷりに萌えたまーちゃん課長と二課のみんなは『見送る会』と称して、そのまま飲み会になだれ込んだらしい…。
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