208 / 229
第209話
日向はそのまま僕の唇を塞いで抱き上げると寝室へと向かった。
むぐむぐと首を振って抵抗するが、日向の腕力には敵わない。
ベッドへ押し倒されて身動きできない僕に
「いいか瑞季。俺達は『生きて』いるんだ。
この先何が起こるかわからないけれど、今この瞬間、俺達はお互いを思い労わりあって愛し合ってるんだ。
先のことをあれこれ悩んでも仕方がないじゃん。俺はお前を愛してるし、お前だってそうだろう?
お袋は与えられた命を沢山の愛情に包まれて精一杯生き抜いた。
親父も、俺もお前も、朝陽も、じいちゃんもばあちゃんも。最後までお袋を愛し続けた。
亡くなった今でも愛してるし…俺達の心に生き続ける。
残された俺達はその命の尽きる時まで、愛する人を思う存分愛し続ければいいんじゃないのか?
瑞季、俺はどんな時もいつまでもお前だけを愛してるよ。」
ぽたり
僕の頬に冷たいものが落ちてきた。
日向の涙…
目の前の愛しい男が幼子のように見えた。
一瞬緩んだ手の拘束を振り解き、その頭を胸にかき抱く。
愛おしい、愛おしくて堪らない。日向への溢れる想いが止まらない。
とくとくと心臓の音が木霊している。
「日向…愛しています…」
ともだちにシェアしよう!