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第209話

日向はそのまま僕の唇を塞いで抱き上げると寝室へと向かった。 むぐむぐと首を振って抵抗するが、日向の腕力には敵わない。 ベッドへ押し倒されて身動きできない僕に 「いいか瑞季。俺達は『生きて』いるんだ。 この先何が起こるかわからないけれど、今この瞬間、俺達はお互いを思い労わりあって愛し合ってるんだ。 先のことをあれこれ悩んでも仕方がないじゃん。俺はお前を愛してるし、お前だってそうだろう? お袋は与えられた命を沢山の愛情に包まれて精一杯生き抜いた。 親父も、俺もお前も、朝陽も、じいちゃんもばあちゃんも。最後までお袋を愛し続けた。 亡くなった今でも愛してるし…俺達の心に生き続ける。 残された俺達はその命の尽きる時まで、愛する人を思う存分愛し続ければいいんじゃないのか? 瑞季、俺はどんな時もいつまでもお前だけを愛してるよ。」 ぽたり 僕の頬に冷たいものが落ちてきた。 日向の涙… 目の前の愛しい男が幼子のように見えた。 一瞬緩んだ手の拘束を振り解き、その頭を胸にかき抱く。 愛おしい、愛おしくて堪らない。日向への溢れる想いが止まらない。 とくとくと心臓の音が木霊している。 「日向…愛しています…」

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