220 / 229

第221話

「…落ち着いたか?大丈夫か?瑞季…」 「…うん、ごめん、日向… なんかさ…ものすごく…辛くって…悲しくって…押し潰されそうで…」 「うん。」 「日向が…涼香ママみたいに僕の側から急にいなくなったら…って考えたら…もう…もう…」 「…うん、ここにいるから。ちゃんとお前を抱いてるだろ? 心配するな。お前を抱きしめてるのは誰だ?」 「……日向。」 「だろ?ホンモノの俺だ。 なぁ、瑞季。俺達は皆んないつか必ず生命を終えるんだ。その限りある時間に本当に心から愛する人と出会えて結ばれるなんてすごいことなんだよ… 俺はお前に出会えてこうやって共に生きていけることに感謝している。 お袋は、病気になってからも残された生命を精一杯燃焼した。この世に姿形がなくなっても、俺達の心にずっと生き続ける。 亡くなったことはどうしようもなく悲しいけれど、俺達はお袋の分まで幸せになるんだ。 何度も言うけど…先のことは考えるなよ。 今、こうして一緒に生きていることが俺達にとって大切なんだ。 愛してるよ、瑞季。 だから、俺を信じてしっかり一緒に生きてくれ。 お前の生命丸ごと俺に預けろ。俺の生命、お前にやるよ。 俺は、いつもいつまでもお前だけを愛し続ける。 愛してる、愛してるよ、瑞季…」 瑞季の目からぽろりと涙が流れた。 そして俺にしがみついて子供のように声を上げて泣き始めた。 泣きじゃくる瑞季をすっぽりと胸に抱き留め、震える身体を摩り、頭に口付けた。 繊細で優しい俺の伴侶。心が壊れるくらいにお袋を慕ってくれ、俺を愛してくれる愛おしい(ひと)。 「俺が護るから…愛してるよ。」 瑞季が泣き疲れて眠るまで抱きしめ、愛と誓いの言葉をささやき続けた。

ともだちにシェアしよう!