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第224話

程よい熱さの甘い液体が、喉を通り胃に溜まっていく。 「瑞季…いい子…愛してるよ。」 穏やかな口調でささやかれる愛の言葉は、僕の凝り固まった心を溶かしながら身体を満たしていく。 暗闇に飲み込まれていた僕は、一筋の光に導かれ引き上げられ、抱きしめられていた… 半分くらい飲み終える頃に、僕は日向に抱かれていることにやっと気が付いた。 ずっと『愛してる』と言ってくれていたのは、やはり日向だったんだ… 「ご馳走さま。残しちゃった。ごめんね。」 日向が背後からキスをしてくる。 少し空いた唇を割って侵入してきた舌に口内を愛撫される。 今飲んだばかりのココアが唾液に混じり、甘い液体がじゅるじゅると音を立てお互いの口を行き来する。 散々弄ばれ、離れた唇を銀糸が繋いで…切れた。 日向が僕に必死で訴える。 『愛してる』 『離れるな』 『一緒に生きろ』 『お前の生命、丸ごと俺に預けろ。俺の生命お前にやるよ』 次々となだれ込んでくる日向の想い… そうだ、今のこの一瞬一瞬を大切にしよう。 僕達は愛し合っている。 その想いに嘘偽りはなく、いつ寿命がきても後悔しないように、この愛おしい(ひと)を一途に愛そう。 この温もりに包まれて。 満たされていく心と身体を慈しみながら、流れる涙を拭うこともせず僕はいつの間にか眠りについていた。

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