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**不釣り合い**(1)

**  巨大なシェルターはいったい何帖あるだろう。ここは研究室。様々な実験機材に入っている微粒子が所狭しと陳列している。  そこに、俺と彼がいた。 「もう大丈夫だよ? あとはこの制御装置を取り付ければ、瞬間移動装置は完成するから。君は格好いいと、この星でも人気がある。モテるんだから、彼女でもつくって遊んでくると良いよ」  細い指が白髪に近い色素の薄い金の前髪が落ちてくるのを払い除け、タレ目の彼がにっこり微笑む。いつも研究室に隠りきりの彼は、太陽の日差しに当たることが滅多になく、おかげで日焼けすることもない。肌は透き通った白のままだ。  冗談でしょう? 俺は別に年頃の奴らと遊びたいわけじゃない。況してや彼女とかどうだっていい。好きな人は貴方だ。体の線が細く、どこか頼りなく見える貴方を放っておけず、気がつけば恋が芽生えていた。  俺はただ、貴方と同じ時間を共有したい、それだけだ。それなのに彼は俺の気持ちを全然わかってくれない。 「俺、別に遊びたいわけじゃありません」 「ご、ごめんね。不快に思ったなら謝るよ。ただ、君くらいの年齢の子は他の星に行って買い物をしたりするのが楽しいだろうからと――。こんな、『オジサン』相手に一日中研究に付き合うなんて楽しくないと思って……」  (いら)ついて視線を()らせば、彼は慌てた様子で訂正した。オジサンって言っても、たかだか八歳違うだけ。年齢なんてたいして変わらない。  どんなに頑張ったって絶対に追い着くことのできない年齢っていう壁が俺の恋心を拒絶する言い訳に聞こえて苛つく。

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