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**不釣り合い**(2)
「そんなの決めつけです。俺は双羽 さんのことを一度だって『オジサン』だと思ったこと無いですし、双羽さんと一緒にいるのは同年代の奴らと連んでいるよりもずっと楽しいです」
俺の気持ちを勝手に決めつけないでほしい。
「ねえ、いい加減自分の気持ちに素直になってください」
「あ、あの……天伍 くん?」
椅子に腰掛けている双羽さんを追い詰めるように身体を寄せ、逃げられないよう、俺の腕で檻を作る。目の前にあるのは焦り顔だ。
ただでさえタレ目で泣きそうな顔をしているのに、顔を近づけるとさらに泣きそうだ。だけどそれだけじゃなくて、頬はほんのり朱が混じってもいる。
……迷えばいい。双羽さんの百面相は見ていて可愛い。
そしてどうか俺の気持ちに気づいて。貴方の心に浮かんでいる俺の気持ちから目を逸らさないで。
「あ、スイカ切ってきますね?」
たしか冷蔵庫にあったはず。
少しくらいは逃げ場を与えてあげよう。
「好きでしょう?」
自らの唇を双羽さんの耳孔に近づける。耳元で囁けば、彼の両肩がビクンと震えた。
俺がスイカを切り終え、戻る頃には、いったいどういう反応を見せるだろうか。
これから後のことを考えると、口元が緩んでしまう。
さあ、どうやって攻めてやろうか。
**END**
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