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**運命のひと。**(2)

 なんでも彼の母親は女の子が欲しかったらしく、よく女の子の格好をさせていたんだとか……。  再会で打ち明けられた新事実。 「別れ際、微笑んだ貴方がとても嬉しそうで、忘れられなくなった」 「……はあ?」 「責任、取ってね」  にっこりと、天使さながらの微笑みを俺に向け、そう言った。  ドキッ!  不覚にも、その微笑みで胸が高鳴る。  ……たしかに、彼は可愛いと思う。  睫毛も長い。  だけどさ、ヒナちゃんは男であって、女の子じゃない。 「まあ、誠二、よかったわね。貴方ったら、顔もそこそこいい男なのに、人形ばかりに目がいって、彼女なんてつくろうともしなかったじゃない? 一生独り身なのかとも思ったけど、やったじゃない! 貴方ってば、ヒナちゃんがどんな子になったのかって、ずっと気にしてたものね」  あんぐりと口を開け、満面の笑みを浮かべている彼を見つめていると、母さんと父さんが店の奥からやって来た。  母さんの目には、光る雫が浮かんでいる。 「ちょっと待て! おかしいだろう、そこ!! 彼女は男だぞ?」  どうせ聞くなら、話ははじめから聞こう。  男だってカミングアウトした彼の言葉を聞かず、ヒナちゃんだっていうことは聞いていたのかよっ!?  なんっつう勝手な耳だっ!! 「まった、またあ、こんな可愛らしい男の子が何処にいるのよ? まあ、たしかに、背は誠二と変わらないけれど?」 「……そうなんです。誠二さん、わたしのこと、男だって……」  目を潤ませ、母さんに媚びる彼。  ――いや、そこおかしいだろ。

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