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**運命のひと。**(3)

 さっき、自分から男だってカミングアウトしたじゃん。  なんで、ここにきて、「男」を否定するんだ? 「ごめんなさいね、ヒナちゃんと再会して、きっと照れているのよ」  フフ、と笑う母さん。  ――いや、いやいやいやいや。そうじゃない。こいつは本当に男なんだって!!  ……というか。実の息子の言うことを信じないなんて、ひどい。 「違うって、マジ、こいつ男なんだって!!」  こうなったら、何がなんでも信用してもらう必要がある。  父さんと母さんには彼の体つきを見てもらって、俺が間違っていないことを知ってもらう必要がある。  多少、手荒いが相手は男だ。  何も全部脱がせるわけじゃないし、せめて上半身だけでも確認してもらおう。  陽向の服の裾を引っ張り、持ち上げようとすると……。 「やっ……誠二さんのえっち」  恥ずかしそうに頬を染め、両腕を華奢な体に回してそう言った。 「まあ、何してんの!! そういうことは親がいないふたりきりの時になさい!!」  慌てる母さんの隣では、父さんが険しい表情でうんうんと頷いている。  二人は、けっして口にはしないものの、不身持ちだと言っているようで……。  ……なんで、俺。  こんな扱いを受けているんだろう。  ……そりゃね、たしかに。  大きくなったヒナちゃんはどんな子になったんだろうと考えたことはある。  道ばたで年頃の女の子とすれ違った時は、ヒナちゃんもきっとあんな感じになったのだろうか、とか、色々想像を膨らませてしていたさ。  ……今だって。  不覚にも、にっこり微笑んだ彼の表情に、ドキッともしている。  だけど、相手は男。そして当然、俺も男なわけで……。  人形作りが楽しくて、思春期を迎えた頃だって女性に何の感情も持たなかったのも事実だ。  だが、俺は男。そしてヒナちゃんも男だ。道を踏み外すつもりはない。  ……ハズ、だったのに……。 「なんでこうなっちまうんだよおおおぅっ!!」  うららかな昼下がり。  俺の悲鳴にも似た声が響き渡った。  **END**

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