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続**運命のひと。~奪われたファーストキス**(2)
まさか泣き出すとは思ってもいなかったから、慌てて腰を上げる。その時だ。無様にもローテーブルの脚に躓いてしまった。
「うわっ!」
「えっ?」
ガタタンと大きな音を立て、俺の体が陽向の方へと倒れ込む。
「美味しいケーキはいかが……あら、お邪魔だったかしら……ごめんなさいね?」
何というタイミングだろうか。俺が倒れたのを見計らったかのようにして、母さんが部屋のドアを開けた。
俺を見た瞬間、母さんは頬を赤く染めて、ケーキをふたつテーブルの上に置くと、すぐさま部屋を出て行く。
静かな空間にドアが閉まる音ばかりが響いた。
「えっ、ちょっと、待てよ母さん!!」
慌てたのは俺だ。だって陽向を押し倒している図が出来上がっている。
一生の不覚だ。
「……完全に誤解されたな」
「お前が言うなよ……」
がっくりと首を項垂れる俺。
「隙あり……」
俺の真下にいた陽向が動く。
チュッというリップ音と共に、何か柔らかいものが俺の唇に当たった。それが陽向の唇だと気づいた時には、もう彼は俺から離れている。
「さて、おばさんからのケーキを貰おうかな。手、洗わせて貰うね」
彼はそう言うと、立ち上がり、部屋を出て行った。
残された俺は、というと……。
両手は床に付けたままだ。
なんだよ、もう!!
くっそ、陽向の奴……。
顔が熱いのは何故だろう。
陽向の唇の柔らかな感触が脳裏に焼き付いて離れない。
「俺のファーストキス……」
俺は唇を腕で押さえ、しばらくの間、放心してしまった。
**END ?**
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