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**身代わり。**(3)

 ……まさか。  まさか、それで彼奴は俺を抱いたのか?  俺をこの子と思い込み、二次元の存在を被せて、俺を……?  そう思ったら、怒りが込み上げてくる。 「ごめんね、これで拭いて……」  タイミング良く高橋が濡れたタオルを持ってきた。 「ふざけんなっ! なんだよこれっ!!」  俺は怒りにまかせて、高橋にゲームのケースを投げつけた。 「あ、そ、それは……」 「此奴の代わりで俺を抱いたのかよっ!?」  なんだよそれ、俺、最悪じゃんっ!!  悔しい。  苦しい。  悲しい。 「違うっ!!」 「違うって何がだよ?」 「この子を、名取と置き換えてゲームしてたんだ。僕、僕は……名取くんに一目惚れしてっ!!」  高橋? なにを言ってるの? 「ごめん、あの、ほんとに……ごめん」  最後の、『ごめん』は、今にも消え入りそうな声だった。  ヤられたのは俺の方なのに、高橋の方がずっと苦しそうで、居たたまれなくて、俺は無意識に手を差し伸べ、丸まった彼の背中を包み込んだ。 「な、とり?」  おかしい。  俺、強姦紛いなことをされたのに、身代わりじゃないって思ったら、すごくホッとしてる。  高橋を抱きしめるなんて……。 「身代わり、もういらねぇな」  って、俺、何を言ってるんだ!? 「っつ、名取くんっ!!」  もうダメだ。放っておけねぇ。  今の自分がなんだか可笑しくて笑えば、高橋は俺の口を塞いだ。 「好き、好きだ。名取くんが好き」
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