47 / 106

**かくれんぼ**(1)

 **  ぼくの名前はフェリシオ。フェリシオ・ヒースコート。  ぼくは公爵家、ヒースコート様のお屋敷で庭師をしている。  姓は同じだけれど、ぼくはヒースコート家の人間ではない。  旦那様はとてもすごい。裕福な暮らしをしているのにもかかわらず、それを鼻にかけない。孤児院や経営が苦しくなった教会に寄付をしているお優しい方なんだ。  かく言うこのぼくも、孤児だった。十三年前、ヒースコート家に引き取られるまでは、天涯孤独だったんだ。  旦那様には一人息子がいる。名前はローランド。ぼくよりもひとつ年上だ。ローランド様とは年が近いこともあって、兄弟のようにして旦那様に育てていただいた。その旦那様は去年、病で他界してしまった。  当然、嫡男のローランド様はヒースコート家を継ぐことになり、必然的に奥さんを迎えなければいけない。  ――ローランド・ヒースコートには結婚の噂が囁かれている。その噂はなんと、郊外にまで広がっているんだ。  公爵家の花嫁探しなんだから当然だが、それ以上にローランド様は人目を引く容姿をしているということにあった。  襟足まである金の髪に、高い背。すっきりとした顎のラインに長い睫毛。グレーの目は澄んでいて、吸い込まれそうなくらい綺麗だ。それなのに、立ち姿はたくましい。彼はとてもハンサムだった。 「フェリシオ、この娘はどう思う?」  ローランド様に肖像画の一枚を見せられる。

ともだちにシェアしよう!