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**かくれんぼ**(3)

 ぼくは旦那様に拾われた、ただの庭師。細すぎる体型に、どこにでもある茶色い髪をした、見窄らしい容姿の貧しい民。  公爵家の主人と親に捨てられた孤児。  この恋はけっして叶うことはない。  ローランド様への恋を諦め、傍で尽くすか、それとも新しい場所を見つけてこの屋敷を去るか……。ぼくは運命の分かれ道に立たされている。  仮にローランド様の元から離れたとしても、彼を忘れることができるだろうか。  見上げれば、太陽は真ん中にきている。  ……もうこんな時間なんだ。  あ、そう言えば、ナミのご飯がまだだった。  ぼくは乱暴に涙を拭うと、ナミを探しに庭へと下りる。  ナミっていうのは、去年出会った白猫だ。旦那様が亡くなられた数日後、路上で馬車にひかれそうになったところを助けたのがきっかけだ。以来、ローランド様の許可をいただき、ぼくが世話をすることになった。  彼女はボクの家族の一員であり、ローランド様に対する恋の良き相談相手でもある。  ナミに何かあったら大変だ。  もし、路上に出ているようなら保護しなきゃ。  ぼくは彼女の定位置になっている日当たりの良い薔薇園へと急いだ。 「ナミ、出ておいで~」 「にゃあ~」 「ナミ? あれ? どこにいったんだろう? ナミ? 道路に出てはいけないよ? また危ない目に遭うからね? ご飯あげるから、出ておいで?」  声はすれども姿を見せず。ぼくはナミの鳴き声がしたそこで、話しかけてみる。すると猫の鳴き声じゃない、男性特有の低い声も間近に聞こえた。

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