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**かくれんぼ**(4)
「フェリシオ? 何処にいる?」
ああ、どうしよう。ローランド様がぼくを探している。だけど、ナミが心配だ。また馬車にひかれそうになるかもしれない。
もし、ナミが死んでしまったら――。
そう考えると胸が苦しくなる。
ぼくにとってローランド様はとても大切な人だけれど、ナミだって同じくらい大切な家族なんだ。だからぼくを呼ぶ低い声に返事をしないで、引き続きナミを探した。
「にゃあ」
どれくらいの時間を探しているだろう。依然としてナミの姿が見えない中、すぐ背後でナミの鳴き声が聞こえた。
意外と近いかも。
しゃがみ込み、ナミの声がする方を覗き込む。
「ナミ、見つけた! ……って、あれ? ナミ? おかしいな声がしたと思ったのに……」
見つけたと思ったそこには、だけどナミの姿がない。
目の前に広がるのは、綺麗な緑の茨ばかりだ。
「ナミ? どこに行ったの?」
ふたたびナミを探すため、ほんの少し腰を上げる。
そこにはぼくが育てている薔薇の蕾が複数見えた。開花まであと二、三日くらいかな。
ローランド様は赤い薔薇がお好きだから、きっととても喜んでくださるに違いない。
ローランド様のことを考えていると、背後から彼の声がした。
「フェリシオ? どうかしたのか?」
振り向けば、太陽の明るい日差しを受けた、背の高い彼がいた。
ああ、ローランド様。
あまりの綺麗な光景に直視できず、そっと顔を俯ける。
見えたのは、一足先にたったひとつ開花している赤い薔薇。
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