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**かくれんぼ**(5)
たしか赤い薔薇の花言葉は、『純粋な愛』『愛の告白』だ。
もしかして、ナミが応援してくれているのかな……。
彼女は猫だけど、猫は人間の気持ちを理解すると聞くし、それに彼女にはローランド様の恋心を相談している。
もし、彼女が応援してくれているのならば……。
ナミの行為を無駄にはできない。
たとえこの恋に破れたとしても、ローランド様の傍にいられなくなっても……。
いい加減、終止符を打たなければいけないのかもしれない。
「フェリシオ?」
逸らした視界の端で、ローランド様がやって来るのが見えた。
「あ、すみません。ぼく、あのっ!」
言え、ここで言わなきゃ、一生後悔する!!
ぼくは開花している赤い薔薇のすぐ隣に立ち、両脇に力なくぶら下がっている手を拳にして目前にいるローランド様を見上げた。
「貴方が好きです!」
言った声は震えていて、とても小さい。
だから聞こえないんじゃないかと思ったけれど、それも心配はなかったみたいだ。
「ああ、フェリシオ。君はなんて……可愛らしい真似を……」
ローランド様はそう言うと、ボクの前に跪いた。
「わたしも君が好きだよ。ずっと見ていた」
ローランド様の手によってぼくの手が掬い取られ、手の甲に薄い唇が乗った。
うそ? ほんとうに?
空いている片方の手で頬を抓ってみても、痛いばかりだ。
「うそ、うそだ。だって貴方はいつも花嫁候補の肖像画をぼくに見せて、どの子にしようって相談してきたじゃないっ!!」
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