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**捨てないで**(4)
だって泣いてしまえば、「捨てないで」と縋 ってしまいそうだったから……。
ズキズキと胸が痛む。
だけど、ああ、だめだ。
どんなに泣くのを堪えようとしても、これで最後なんだと思い知れば視界が滲んでくる。
僕は目をつむり、端正な顔立ちをしている彼から顔を背けた。
――知っていた。僕だけだっていうこと。
でも、それでもずっと通い続けてくれていたから、少しでも僕の体が気に入ってくれたのかもしれないと思う時もあったんだ。
それは単なる自惚れ。
僕は結局、数人様にとってただの空間でしかなかったんだ。
もういい。
数人様にとって僕がどれだけいらない存在なのかがわかったから。だからもう、一人で泣かせてほしい。
「……はい」
僕は震える声を必死に隠し、静かに頷いた。
暗闇が視界を覆う。
「だからさ、君を身請けする」
静寂と絶望の中、数人様は静かにそう言った。
「えっ!?」
今、何かおかしな言葉を聞かなかっただろうか。
どういうことかと目を開けても――やっぱり涙で視界が滲んで何も見えない。
「いいね?」
彼は念を押すと、僕の目尻に浮かんだ涙を拭い取った。
クリアになる視界の先には、にっこり微笑む数人様がいた。
「っ、あの、でも! 僕は色子で、数人様とはご身分が……」
「親がここへ連れてきたんだ。文句は言わせないさ」
信じられない気持ちでいっぱいの僕に対して、彼は躊躇 うことなくそう告げた。
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