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続**お馬鹿ほど可愛い~お馬鹿な可愛い恋人**(1)

** 「(ながし)、良、良」 「はいはい。わかったから、これ、やってしまおうな」  時刻は夜十時。  今日は直のお袋さんと親父さんは直を残し、泊まりがけの温泉旅行に行っている。二人は一番信用ならない俺に直を任せた。  恋人の(すなお)は、まだ机に向かって十五分も経っていないというのに、飽きたと抗議してくる。 「……わかんない」  おいおい、さっき教えたばかりじゃないか。 「じゃあ、もう一回説明するから、ちゃんと聞けよ?」  俺は大きなため息を漏らし、いったい何度目になるだろう。方程式の解き方を繰り返し教える。 「……良、冷たい」  なんでだよ。丁寧に教えてやってるじゃないか。  赤い唇をツンと突き出し拗ねる直に、俺はもう一度大きく息を吐いた。 「いつもと同じだろう?」  いや、訂正しよう。今日は昨日にも増して直を抱きたいという欲望が増している。  直への恋心は日に日に膨れ上がっている。  直を抱きたい。  俺の下でたくさん鳴かせたい。  俺の欲望が治まる気配は一向にない。  膨れ続ける恋心に苦笑を漏らしてしまいそうになる。  そんな俺に対して、直はふくれっ面をしたまま首を大きく横に振った。 「良、全然優しくないっ!!」 「ほう?」  俺がどれほど直を抱きたいと思っているか。それでも直に痛い思いをさせまいと必死に我慢しているというのに……。  いくら俺の葛藤を知らないからとはいえ、直の『優しくない発言』にカチンときた俺は、意見する唇を自らの唇で塞いだ。 「ん、んぅううっ」  上顎から歯列を通り、下顎へと舌を這わせる。

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