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**お馬鹿ほど可愛い**(3)
「朝まで一緒に寝るとか幼稚園児か。もうそんな年じゃないだろう」
「っつ!! なんでっ、そんな言い方」
正直、俺は直とこの関係を手放したくなかった。ほんの一時、一緒に眠るだけでも俺の息子は元気になる。力尽くで直を奪ってしまいそうになる。そうなれば、直は俺を嫌うだろう。直の隣にいられなくなる。
すべては俺と直の関係を保つために――。
「……そんな、ひどい、ボクは……うわああああんっ!!」
好きだからとは言えず拒絶すると、直は大声で泣き始めた。
ちょっ! こんな時間に大声で泣くなよ!! 近所迷惑だし、直のご両親だって起こしてしまうじゃないか!!
「直、落ち着け、泣くな!!」
電気を点け、俺は慌てて直の方へと歩み寄る。丸まった背中を撫でてやっても大泣きは止まらない。
直は首を左右に振り、幼い子供のように駄々をこねる。
「やだ、やだやだ。なんで? どうして? ボクのこと嫌いになった? 彼女さんができたから、もうボクとは話もしてくれないの?」
はあ? 彼女って何だ?
直の言っている意味が判らない。
「彼女? 誰の?」
俺の心には常に直がいる。彼女なんているわけがない。
突拍子もない言葉を理解できず、訊ねると、直はしゃくりを上げながら話していく……。
「夢の中で……良が……」
直がぼそっと告げた。
ちょっと待て。
「直の夢は現実じゃない」
どうやら直は現実と夢がごちゃ混ぜになっているらしい。
「だってだってだって、ボクが良に好きって言ったら、彼女がいるからって……うあああああんっ」
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