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**恋愛びより。**(2)

 身長180センチの僕よりも頭ひとつ分高い背に、襟足まで短く切りそろえられた黒髪。細くて鋭い目。すっと伸びた鼻の下にある薄い唇。端正な顔立ちをしていて、しかも肩幅も広い。モデル並みの体型でとても格好良い。茶色い髪に大きな目。もやしのように軟弱な僕とは正反対だ。  彼は滅多に笑わない。薄い唇はいつもへの字に曲がっている。 『格好良いけれど、無愛想な人』それが第一印象だった。  だけどもし、いつも無愛想な人が今まで見たことがないくらい、優しい微笑みを見せたら?  僕が大好きな子供たちに微笑みかけていたら?  僕は、荘真さんの笑顔に()れたんだ。  彼は二年前に奥さんと離婚をして、ひまちゃんとふたり暮らしをしている。  でも、この恋は実らない。  それは彼が僕と同性だからというのもあるんだけど、それだけじゃなくって、彼には恋人がいるから。  外資系の仕事をしている忙しい荘真さんに代わって、彼女さんが荘真さんのお子さんである、ひまちゃんを迎えに来ているから……。  恋心が発覚してから、すぐに失恋。  なんて悲しい現実だろう。  感傷に浸っていると、荘真さんの彼女さんが見えた。  ――ああ、今日は最悪だ。  荘真さんも一緒にいる。 「パパ、おねいちゃんっ!!」  ひまちゃんは満面の笑顔をふたりに向けて駆けていく。  三人一緒にいる姿を見ると、まるで本当の家族のようだ。  僕の胸に痛みが走る。  まずい。涙、出そう……。

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