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**夕暮れの朱よりも**(1)

 ** 「俺の目の前でチョロチョロしやがって! こっちはいい迷惑なんだよ、とっとと失せろ!!」  ガタンッ!!  俺は煩わしい奴を壁際に追い込み、壁を叩いた。  ここは屋上。しかも放課後だから、俺と其奴(そいつ)以外は誰もいない。真下にあるグラウンドから威勢の良い声が聞こえる。 (はんっ、熱心なこった。)  俺は、俺よりもほんの少し背が低い其奴。優等生くんの荘間 拓人(そうま たくと)を威圧的に見下ろし、そう言った。  此奴(こいつ)――荘間 拓人は俺と同じクラスで、学年での成績はトップクラス。運動神経抜群で先公に気にいられまくっている。襟足よりもやや短めの髪は黒。服装だって第一ボタンまでしっかり止めていて、きっちり着こなしている。こういう奴を生徒の鏡っていうんだろう。  対する俺は、金に染めた髪は肩まで伸ばし、耳にはピアス。制服だって校則から違反している。着崩したカッターシャツの下に赤いシャツを着ている。不良まっしぐらだ。  喧嘩や煙草は当たり前。授業も俺の気が乗らなければ屋上に消える。だからだろう。先公から俺が真っ当な人間になるよう、此奴に言いつけたんだ。  そのおかげで、煙草をくわえれば、すぐに奪われ、火を消される。  おちおち休憩もできやしねぇ!!

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