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**夕暮れの朱よりも**(2)

「うん、でも煙草は身体によくないからやめよう」  にっこり笑う此奴は、俺の威圧的な態度でもなんのその。他の奴ならとっくに尻尾を巻いて逃げ出しているってのに!! 「いいか? 俺はな、ゆっくりしたいんだよ! 先公に何を言われたのか知らねぇけどよ、お前がいると、こっちは大迷惑なんだよ」  おかげで喧嘩もおおっぴらにできねぇし!! 「君は優しいものね、僕が傍にいると怪我をしないよう気遣って、喧嘩するのを控えてくれてるでしょう?」 「なっ!!」 「そういうところ、すごく好きだよ?」 「好きって……」  ボンッと火が付いたように赤くなっているのが自分でも分かる。図星だ。  あまりにも俺の気持ちを見透かした言葉に否定することもできず、そっぽを向けば――奴はすでに俺の心情を知っているようだ、にっこり微笑んでいる気配がする。  勘違いするな俺。此奴の言う『好き』はそういう意味じゃねぇ。  なんでだ?  なんで俺の心臓は異性に告られた時みたいにドキドキする?  意味が分からねぇ!! 「そうやって照れるところもね、可愛いんだ。先生に言われたからじゃない。僕が、君を好きだから一緒にいるだけだよ」  首を傾げながら、そっぽを向く俺に、顔が近づいてくる。  ってか、可愛いって何だよ!!  俺は自慢じゃないが目付きが悪いし、此奴よりも背が高い。それに煙草も吸うし、不良だし。先公には目を付けられるしウザがられるしで、可愛いなんて言われたのは小学生の子供(ガキ)の頃以来だ。

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