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**言えない**(3)

 ――威人への恋を告げず、友人のままでいようと決意した俺。  ――威人を殴りつけ、そして威人を避けるため、講義を抜け出す俺。 「……そうだな」  ああ、そうだ。俺はいつだって逃げてばかりだ。  威人への恋を終わらせなきゃ。  そう思うのに、彼を見た瞬間、心臓が鼓動する。  この場から逃げるため、俺はまた歩き始める。  威人を横切るその直後、俺の腕が掴まれた。  強い力だ。 「ちょっ! 放せよ!!」  腕を振り切ろうとしても、奴の力が強くて引きはがせない。  威人に引きずられるままに、俺は人通りのない裏路地へと入っていく……。  ただでさえ大学は山の中で、木ばかりが目立つ。それなのに、裏路地へと進めば、そこはもう路地とは言えない、林の中だ。もちろん人は誰もいない。  きっと三日前の落とし前をつける気だろう。  俺は覚悟して、顔面を殴られてもいいように唇を思いきり噛みしめ、目をつむる。  その直後だ。 「んっ、ふぅううっ!!」  強く引き結んだ唇を、弾力のある何かが塞いだ。  息がしにくくなって目をこじ開ければ、そこには威人の顔があるばかりだった。  なに? 新手の嫌がらせ?  他の奴らみたいに、俺も抱かれるの?  喧嘩を売られ、殴られた腹癒せに?  嫌だ。そんなのは嫌だ。  好きなのに……。一度でも友達として傍にいようと決意したのに……。  想われてもいなくて……嫌悪感で抱かれるなんて、そんなの、耐えられない。 「いやだっ、やっ!!」  俺は分厚い胸板を押して、必死に抵抗する。  首を振る視界の端で、涙が散っていくのが見えた。

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