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**愛恋-airen-**(2)

 それというのも、俺はまだ力をコントロールができない未熟なエナジストで、無意識のうちに発揮される。おかげで最近、筑紫が体調を崩しはじめている。  今日だって軽い貧血を起こし、保健室に世話になった。  そして俺が筑紫を想えば想うほど、この特殊能力は強くなり、筑紫を苦しめる。  だったら、もう傍にいない方がいい。 「別れるなんて……ぼ、僕。何でもするよ、お願い、だから!!」 「いや、もう無理だ」  筑紫を振るため、痛む胸を無視して彼に背を向けた。 「やだっ、悠騎(はるき)!!」  教室から出る俺の背後からは、なおも拒絶する筑紫の悲痛な叫びが放たれる。細い腕が俺の腰に回った。  すると、筑紫から漂う甘い匂いが俺の鼻孔をくすぐった。  これは危険な兆候だ。なにせこの甘い香りこそが、筑紫のエナジーにほかならないからだ。  俺はまた、無意識のうちに筑紫のエナジーを奪とうとしていた。 「筑紫……。いや、七瀬、君とはもう終わったんだ」 「っつ、やだよ……こんなに好きなのに……お別れしたくない。悠騎に好きな人がいてもいいから……二番目でもいいから……だから……」  筑紫の必死な姿なんて見ていられない。  涙を流す彼を今すぐ抱きしめてやりたい。  俺だって筑紫と別れたくないと、そう言いたい。  なおも縋ってくる筑紫のいじらしい姿が、俺の決意を簡単に打ち砕いてくる。  なんとか筑紫に離れてもらおうと、周囲をさぐれば、こちらへ丁度向かって来る人間の気配を感じた。そいつに俺のエナジーを送り込む。  俺の前に現れたのは、俺や筑紫と同じ二年だろう。俺よりもほんの数センチほど背が低い、細身の男だった。

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