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**愛恋-airen-**(4)

 するとそこにいたのは、俺よりも頭ひとつ分背の低い、大きな目が印象的な、天然パーマの彼――筑紫だ。  昨日の放課後。これ以上ないくらい、筑紫を傷つけたというのに、まだ懲りもせず俺の自宅までやって来ることが信じられない。  だが、筑紫はやはりダメージをくらっているのか、涙で目が潤んでいる。彼は昨夜からずっと泣き通しだったのだろう。瞼が赤く腫れている。彼は俯き、ただ突っ立っていた。  年頃の男子よりも背は低いと思っていたが、いつも以上に背が低く感じるのは、昨日、俺が振ったからだ。  項垂れている彼を見ると、包み込み、守ってやりたくなる。  悲しむことはないと(なだ)めてやりたくなる。  そうして筑紫はいつだって、俺の中に眠っていた母性を簡単に引き出すんだ。  俺は筑紫を保護したくなる感情を押し殺し、伸ばしたくなる両手に拳を作って耐える。 「何しに来た。お前とはもう何の関わりもないと言った筈だ」 「っつ!!」  自分の気持ちを押し殺しているからか、突き放す声はいつも以上に冷たい。  そんな俺の声に、筑紫の小さな肩が震えた。 「まあ、悠騎。そんなに怒って、いったいどうしたの? お友達とは仲良くしなきゃダメでしょう! さあ、中へどうぞ。私たちはこれから出かけるけど、ゆっくりしていって頂戴ね?」  何を思ったのか、母さんは横から入って来るなり、筑紫の背中を支えて中に入るよう促した。

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