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続**愛恋-airen-**なけなしの恋~不完全な彼(1)
side:七瀬 筑紫
僕には好きな人がいる。その人の名前は志摩 悠騎 。
彼は僕とは同じクラスで、背が高くてすらっとしたモデルさんみたいな体型に、象牙色の肌と対照的な襟足までの漆黒の髪が印象的。睫毛は長くて目は切れ長。高い鼻梁。大学生にも見えちゃうくらい、落ち着いた雰囲気のその人。
だけど完璧なのは容姿だけじゃない。頭も良くて運動神経もすごくいい、とっても格好いい人だ。
対する僕はチビで、高校2年なのにいまだに中学生に間違われるくらい、童顔。体型も彼とは同じ性別なのに全然違う。
僕たちが通う高校は男子校で、異性がいない分、同性の恋人がいてもおかしくない。
格好いい彼はみんなの憧れの的だ。
僕から一生懸命話しかけ、誰にも取られたくなくて、友達から恋人に昇格したのは一ヶ月前。
だけど恋愛の神様はやっぱり残酷だ。あんなに一生懸命アプローチしたのに、付き合って一ヶ月が過ぎた今日。好きな人ができたからと、彼に振られてしまった。
――いつか……。
いつかこういう日が来ると思っていた。
何でも完璧にこなす彼は、僕なんかじゃ役不足だって――思っていた。だって悠騎に腕を絡めた相手の人、すごく綺麗だった。チビな僕とは月とすっぽん。雲泥の差がありすぎる。
なにせ僕は、悠騎とキスさえしたことがない。それは、悠騎にとって、僕はそういう対象には見られていない証拠だ。
もしかしたら、告白を受け入れてくれたのも友達としてで、僕に哀れみをもったからなのかもしれない。
けっして叶わない恋を思い知れば、涙が溢れてくる。
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