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続**愛恋-airen-**なけなしの恋~不完全な彼(4)

 ピンポン。  玄関からチャイム音がして、悠騎を迎え入れる。 「いらっしゃい!」  悠騎の今日の服装はグレーのシャツにデニムパンツ姿。一般的によく見る服装なのに、モデルさんみたいだ。悠騎はやっぱり格好いい。 「入って入って」  悠騎の背中を押して部屋の中に招き入れた。 「何か飲む? 烏龍茶があったと思うんだ」 「ああ、ありがとう」  そう言った悠騎の眉間には皺が寄っている。  悠騎? なんだか少し苦しそうなのはどうしてかな? 「悠騎?」  悠騎に近づき、首を傾げると、骨張った指が僕の顎を捕らえた。 「筑紫、お前。何かしたのか?」 「えっ? なにが?」  訊ねられてドキッとした。  まさか悠騎に抱かれる準備をしているということを言える筈もなく、しらばっくれる。  すると悠騎は屈んで、僕の耳のすぐ傍に薄い唇を寄せた。 「いつにも増して甘い匂いがする」  恥ずかしくて顔を俯け、だけど悠騎が気になって上目遣いで見てみると、彼の眉間には深い皺が刻まれていた。 「……外に出よう」 「えっ?」  なんで?  ダメだよ。そうしたら、悠騎に抱かれるっていう僕の決意が水の泡になっちゃう。 「悠騎!!」  焦った僕は背伸びして、悠騎の唇を奪った。  自分からのキスは、すぐに逆転して悠騎のものになった。 「ん、っふ……」  開いた唇から、悠騎の舌が滑り込んでくる。  悠騎、悠騎……。  悠騎を想えば想うほど、恋心は募っていく。

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