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**もしもこの出会いが偶然ではなく必然であったならば**(2)

 彼は、理央のことをただのセックスフレンドのように思っているが、自分は違う。実は、理央は彼――如月 和真(きさらぎ かずま)に恋をしていた。  大学1年の頃からずっと彼を見てきた。普段、にこりとも笑わない和真が、彼女といる時にだけに見せる優しい笑顔に心奪われていた。  そして理央は別れを切り出した彼女にダメージを受けている和真の弱みに付け入り、近づいた。  振られた和真と偶然の出会いを装い、身体の関係を提案したのだ。理央は和真と会う時だけ、セフレとして淫らな自分を偽っていた。  あわよくば、彼女といた時のように、自分に笑顔を向けて欲しいと願って……。  しかし所詮、自分はセックスフレンドにすぎない。  もともと自分が肉体関係を持ちかけた。当然恋心を打ち明けてはいない。そんなことをすれば、嫌われると思ったから。  だって彼はノンケ。理央を抱いたのだって彼女のことを忘れたいがための行為だったのだ。  その彼と恋人同士になれる筈なんてない。 「……っひ、っふ……」  ホテルから少し離れた駐車場まで走ると、それ以上、動けず、桜の木の下で崩れ落ちた。  見上げれば、先ほどまで和真と身体を重ねたホテルの一室が見える。しかし、理央にはもう、見上げる勇気すらなかった。  想うのは、いつだって自分ばかりだ。  ひょっとすると、自分を抱いていた時も、和真は好きな人のことを考えていたのかもしれない。  胸が張り裂けそうだ。  頬を伝う涙は止まりそうにない。  数分前まではあった和真の体温は、もうすでに消えている。  ……寒い。  身も心も――。

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