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**もしもこの出会いが偶然ではなく必然であったならば**(3)
仮にもし、素直に想いを告げていれば、少しは何かが変わっただろうか。
――否。彼はおそらく、相手にもしなかっただろう。
そうなれば、自分は和真の体温を知ることはなかったし、こんなに苦しい思いもしなかったかもしれない。
なんて愚かなことをしでかしたのだろうか。彼の体温を知らなければ良かった。そうすれば、彼の吐息もただのセックスフレンド相手に身体を気遣う彼の優しさも知ることはなかったのに……。
「馬鹿だな、俺。ほんと……ばかだ……」
「ねぇ、君ひとり? どう? 俺と愉しまない?」
突然声を掛けられ振り返れば、一人の青年が立っていた。
年齢は理央と同じくらいだろうか。身長もあまり変わらない。
「君、セフレでしょ? 毎日ここで男と出入りしてるじゃん? 一度、同性とヤってみたかったんだよね」
にたにた笑いながら、そう言う男の雰囲気が生理的に受け付けない。
男は理央をセフレだと思い込んでいるようだが、理央は演じていただけで、そうではない。男を知ったのも和真が初めてだ。好きな人以外と肉体関係を持つなんて、後にも先にも考えられない。
「他、あたって」
言うだけ言って立ち上がれば、すぐに腕を掴まれた。
「離せよっ!」
「そう言うなって。きっと愉しめるからさ」
同性を抱いたこともない奴が、なぜそうも言い切れるのだろう。
身体を捩り男から逃れようとするものの、男の力は思いのほか強く、苦戦する。
「その子、俺のだから離してくれない?」
理央と男が争っていると、ふいに見知った声が聞こえた。
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