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**もしもこの出会いが偶然ではなく必然であったならば**(5)
思いもしなかった和真の一面に魅せられた理央の心臓は、大きく跳ねる。
「俺、本当はセフレじゃない。和真が初めてだったし……セフレみたいに振る舞っていたんだ。出会ったのは偶然じゃなくて、傷心している和真につけ込んだ。……和真が好きだから……」
真実を告げる緊張と、和真と両想いなのかもしれないという期待で高鳴る胸。
震える声でゆっくりと真実を告げていけば、和真が倒れ込んできた。
「うわわっ!」
和真の体重を支えきれず、理央の華奢な身体が一緒に沈む。
「……なんだ、それならそうと早く言ってくれ……」
言えないからこうなったというのに、和真はなんて無茶なことを言う。
理央は苦笑を漏らした。
「その笑い声がさ、また好きなんだよな~」
力強い手が、理央を包む。
理央はあたたかな涙を流し、彼に身を委ねた。
薄闇の中で、桜の花びらが舞う。
理央の心もまた、宙を舞う薄花桜のように、軽やかだった。
**END**
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