100 / 106

**もしもこの出会いが偶然ではなく必然であったならば**(5)

 思いもしなかった和真の一面に魅せられた理央の心臓は、大きく跳ねる。 「俺、本当はセフレじゃない。和真が初めてだったし……セフレみたいに振る舞っていたんだ。出会ったのは偶然じゃなくて、傷心している和真につけ込んだ。……和真が好きだから……」  真実を告げる緊張と、和真と両想いなのかもしれないという期待で高鳴る胸。  震える声でゆっくりと真実を告げていけば、和真が倒れ込んできた。 「うわわっ!」  和真の体重を支えきれず、理央の華奢な身体が一緒に沈む。 「……なんだ、それならそうと早く言ってくれ……」  言えないからこうなったというのに、和真はなんて無茶なことを言う。  理央は苦笑を漏らした。 「その笑い声がさ、また好きなんだよな~」  力強い手が、理央を包む。  理央はあたたかな涙を流し、彼に身を委ねた。  薄闇の中で、桜の花びらが舞う。  理央の心もまた、宙を舞う薄花桜のように、軽やかだった。  **END**

ともだちにシェアしよう!