5 / 106

**星に捕まった翡翠**(5)

「それでもいい。俺にとって、君は誰よりも尊い存在だから」 「っつ! 僕は下界に降りてきたばかりだし、人間界のことについて何も知らない。何もできないぞ?」 「構わない。傍にいてくれるだけで」  キースは微笑み、赤い唇に自らの薄い唇を落とした。  リップ音が鳴る。 「あ、あの……」  傍から聞こえた声に我に返ったキースは、今さらながら、レイに魅了されていることを知る。  キースはひとつ大きな咳払いをすると、従者と向き合った。 「水路を作る。数キロ離れているが、河があるだろう? そこからここまで続く杭を打ってあるから、それを目印にして作業を開始してくれ」  いつの間にそんなことをしていたのだろうか。レイは翡翠色をした美しい目を瞬かせ、目の前にいる美しい青年を見つめた。 「さあ、俺たちはもう少し眠ろう。その後で皆と合流して水路作りだ。忙しくなるぞ?」 「キース……」  その夜、レイはキースの腕に抱かれ、涸れることのない、愛の涙を流した。  **END**

ともだちにシェアしよう!