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**星に捕まった翡翠**(5)
「それでもいい。俺にとって、君は誰よりも尊い存在だから」
「っつ! 僕は下界に降りてきたばかりだし、人間界のことについて何も知らない。何もできないぞ?」
「構わない。傍にいてくれるだけで」
キースは微笑み、赤い唇に自らの薄い唇を落とした。
リップ音が鳴る。
「あ、あの……」
傍から聞こえた声に我に返ったキースは、今さらながら、レイに魅了されていることを知る。
キースはひとつ大きな咳払いをすると、従者と向き合った。
「水路を作る。数キロ離れているが、河があるだろう? そこからここまで続く杭を打ってあるから、それを目印にして作業を開始してくれ」
いつの間にそんなことをしていたのだろうか。レイは翡翠色をした美しい目を瞬かせ、目の前にいる美しい青年を見つめた。
「さあ、俺たちはもう少し眠ろう。その後で皆と合流して水路作りだ。忙しくなるぞ?」
「キース……」
その夜、レイはキースの腕に抱かれ、涸れることのない、愛の涙を流した。
**END**
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