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**陰陽師は好敵手に牙を剥く**(1)

**  だだっ広い屋敷には庭があり、季節多様な植物たちが植えられている。  白の狩衣(かりぎぬ)に身を包み、夏だというのに涼しそうに、薄い口元にうっすらと笑みを浮かべ簀の子に座している男と向かい合い、庭で仁王立ちをしている俺――潮 由基(うしお ゆうき)はビシッと人差し指を向けた。 「今回は、俺の負けだが、今度こそ負けない!!」  時代は平安。  鬼や魑魅魍魎(ちみもうりょう)跋扈(ばっこ)しているこの時代。  俺たち陰陽師は、帝から奇怪な者たちを静めるよう命じられている。  そして昨夜は、最近巷を騒がせている奇妙な虫が森に巣くうているということで、出かけたのだが、まんまとこの男に、先を越され、その場に足を踏み入れた時には全てが落着していた。  だから次こそはと意気込んで、太陽が空高く昇っている今、俺は彼の元に断言しにやって来たというわけだ。  それなのに……。 「そうだろうね、君は強いから」  穏やかな笑みを浮かべ、彼は薄い唇を動かす。  俺の敵対心なんてコイツにはまったく効かない。 「っつ!!」  なんだよ、余裕の笑みなんか浮かべてんな!!  ムカつく!!  ――そう、俺ばっかりがこの男のことを意識している。  対するコイツは平然として微笑むばかりだ。  まったくもってイラつく!!  目の前にいるこの男の名は、世羅 隆晃(せら たかあき)。  彼は優れた術使いで、帝にも頼りにされている陰陽師のひとりだ。  艶やかな腰まである髪を後ろで結い、涼やかな双眸。長身で、都一の美形としても有名である。  対する俺もまた、優れた術使いとして知られている。  だけど容姿は……。  チビで悪かったな。  どうせ俺は童顔だよ。  今年で24になるけど、少年だと間違われたこともあるさ。  それに、日に焼けた肌に、短い黒髪。目の前にいるこの男とはまったく違う。

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