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**陰陽師は好敵手に牙を剥く**(3)

 俺は急いで隆晃に駆け寄ると、手を差し出し、起き上がろうとしているのを手伝った。 「大鬼だ。人を食らいすぎたらしい」 「なんでお前はそんなに冷静なんだよ! 血がっ!!」  さっき鬼の鋭い爪に切り裂かれた右腕の皮膚は裂け、鮮血が滴り落ちていく。 「君がそんな顔をするなら、この傷もまんざらではないな」  こんな時に何を言っているんだ? 「何言って!!」  まるで隆晃は死を覚悟したような、そんな口調だ。 「君を想っていた」  隆晃。  隆晃!!  血を止めなきゃ!!  俺は自分の狩衣の裾を破り、止血するため、傷ついた隆晃の腕に巻き付けた。  みるみる内に俺の狩衣が赤く染まっていく。  どうしよう。  どうしたらいい? 早くしないと隆晃が死んでしまう!!  視界が滲んでうまく隆晃を見られない。  こういう時、どうしたらいいんだろう。  せっかく優れた術を持っているのに、隆晃を助けることもできない。  何の役にも立たないなんて……。  自分の無能さをことごとく思い知らされる。 「俺、俺は……俺も……隆晃が好きだよ? だから帰ろう。きっとこの傷もすぐに癒えるからっ!!」  グズグズと鼻を鳴らし、隆晃に俺の本当の気持ちを告げた。  ――そう。俺は隆晃が好きだ。  対等に見てほしかったからこそ、何時も突っかかり、勝負を挑んできた。  すべては、俺を意識してほしかったから……。  俺は隆晃の思ってもみない告白に頷き、胸中を告げた。  その途端だ。 「うん、そうか。それは良かった」

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