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**陰陽師は好敵手に牙を剥く**(4)

 隆晃は苦痛の表情から一変して、清々しい笑みに変わる。 「はあ?」  何が良かったのか、さっぱり意味がわからない。  理解出来なさすぎて眉根が寄る。眉間に深い皺ができているのが自分でもよくわかる。 「私のご用はこれでよろしいか?」 「うん、ありがとう。お疲れ」  鬼は静かにそう言った。  今まで殺気丸出しだった鬼は、先ほどの攻撃など嘘のように、ゆっくりと首を垂れ、明らかに、隆晃に対して敬意を払っている。  はあ? 「いえ、隆晃殿には仮がございましたゆえ、返せて良かった」  大鬼は大気の中に溶け込むようにして消えていった。  どういうことかと目の前の男を見れば、彼の腕には受けたはずの深手が見当たらない。  まさか!!  嫌な予感しかしない。 「お、おまっ! 俺をハメたのか!?」  声が裏返ってしまうのは仕方がないことだよな?  対するコイツは、やっぱり口元にうっすらと笑みを浮かべるばかりだ。  それは肯定だ。 「だって、鬼が現れるっていう噂は? 帝からの命令は?」 「うん、噂は俺が流した。帝の耳に入るように」  はぃいいい? なんだって? 「なんっ! しらねぇ! もうお前なんか心配なんかしねぇっ!!」  心配して涙まで流した俺が馬鹿みたいだ!!  ふいっとそっぽを向いて、目に浮かぶ涙をゴシゴシと乱暴に拭い去る。 「だけどね、もう、君は逃げられない。君は俺の言霊に触れた。すでに呪の中だ」  細い腕が伸びてきて、俺の腕を掴んだ。  見た目、すっごく弱そうな細い腕。いったいどこにそんな力が眠っているのだろう。  そんなことを思っている間にも、俺は隆晃に組み敷かれ、地面に仰向けになっている。

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