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**YU-U-WA-KU**(1)
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俺、真嶋 知明 は今、高校時代からの腐れ縁である、穐山 宏一 の家で、来週には提出しなければならない、『老人介護のあり方』についてのレポートの書き上げのため、お邪魔している。
図書館という選択肢はあるが、どうもあの静かすぎる空間が気になってレポートが書けず、俺の家は散らかっていてそれどころではなくて。
そういうことで、友人である宏一の家でレポートを書き上げようっていうことになった。
っていうのは建前でーー。
実は俺、好きな人がいる。
その人は俺よりもふた回りも年上で、ずっと大人な人。
誰かというとーー。
「なあ、お前さあ、俺の親父のどこがいいわけ?」
レポートを書くに当たって2人で掻き集めてきた資料を眺めていた宏一は唐突に口を開いた。
ーーそう。
俺が好きな人は宏一のお父さん、穐山 伸司 さん。奥さんは五年前に病気で他界して以来、伸司さんは独り身を通している。
「どこって。優しいし、足長いし芸能人並みに格好いいし。それに難しい数学の問題とか教えてくれるし頭良いし、俺の父さんなんてハゲてて中年太りだし」
伸司さんは宏一がいるのに凄く若々しい。黒髪にところどころ混じっている白髪も素敵だし、背が高くて足も長くて。切れ長な目は宏一と似ているけれど、眼鏡の効果なのか、それとも性格をあらわしているのか、すごく穏和な雰囲気がある。
伸司さんとは高校の時だったっけ。宏一と俺が解けないってわめいていた難問を、判るまで丁寧に教えてくれたのがきかけだ。
それ以来、もうずっと伸司さんに恋をしている。
当然、この恋心は宏一にしか言っていない。
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