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続**星に捕まった翡翠**-秘めた想いはやがて星に届き……。-(2)

 レイはキースが考えた、『水路計画』を汚いと言い、馬鹿にしたのだ。怒って当然である。  しかし、彼はただ優しく微笑むばかりだ。  まるでキースは、『レイのことなんてどうでもいい』 『執着なんてこれっぽっちもない』と言っているようではないか。 「っつ!!」 (なんで怒らないんだよ!! いつもそうだ。僕が口にすることで怒ったことなんて一度もない!!)  不安が募るばかりのレイは、そうして深夜、キースに抱かれた後、気怠い身体を起こし、寝台から抜け出る。 「ほんと、馬鹿げてる!!」  ひとりごとを呟き、静寂の中に吐き捨てると、作業場からスコップを取り出し、杭が打たれた場所を辿る。  行き先は、キースが計画した水路作りの作業場だ。  レイは、汚れるのが嫌だとそう口にする反面、こうして夜、こっそり寝台を抜け出し、ひとりで水路作りのため穴掘りに出かけるのだった。  ではなぜ、手伝わないと言ったレイがこうして作業に参加するのかと言うと、すべては恥ずかしいからだ。  神の子が肉体労働など前代未聞だ。天界にいた頃は考えたことなんてない。  しかし、もうレイは神通力を失った。天界の住人ではない。けれども彼としては、プライドというものがある。  神の子としての神々しい生き様を捨て去ることが今はまだできない。  けれども、大切な人びとがこうして水路を作っていることもたしかだ。  レイとしては、自分の神通力が消えたことで、しなくてもいい作業を人びとに虐げてしまっていることへの罪悪感もある。  それと、純粋に助けたいという気持ちも、だ。

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