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四章 憎悪と破壊願望 2

 マコトはその後順調に偏差値の高い進学校に入学し、ますます兄との溝が深まったと感じた。  タクミは知らないだろうが、マコトは一度だけ、兄と知らない女の性行為を目撃したことがある。女の上で激しく身体を揺らすタクミを見て、マコトは自分の股間が熱くなっていると感じた。  兄に気付かれないようにその場を去り、すぐに自分の部屋に駆け込んだ。ズボンを降ろして下着の中を見ると、ぐっしょりと濡れていた。射精していたのだ。  ――何てことだ。実の兄に欲情するなんて……。  マコトは自分が分からなくなっていた。こんなことは初めてだ。訳も分からずに自身に手を添え、タクミの乱れた姿を思い描き、それを上下に扱く。  幼い頃抱いた疑問の正体は、ここにあった。マコトはタクミを、兄ではなく、ひとりの男として見ていた。それも性的な対象で。  それは恋や愛などの甘ったるい感情などではない。支配欲や独占欲といった醜い感情だ。  いつしかマコトの脳裏には、自分がタクミを組み敷く様が浮かんでいた。自分の下で快楽に溺れ、嬌声を上げる兄。とても綺麗だ。その兄を自らの手で汚すことに、マコトは愉悦を抱いた。  マコトは優等生を演じながら、裏では日々タクミを犯す様子を妄想した。  いよいよ大学入試が迫ってきて、ストレスが溜まっていたマコトにとって、タクミの存在はある種の精神安定剤になっていた。

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