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四章 憎悪と破壊願望 4

 合格発表の当日、張り出された番号の中に、自分のものはなかった。無理矢理付き添った両親も、それを目撃した。母は人目もはばからずに泣き喚き、父は背を向けて何も言わずに帰っていった。  周りの人間たちは口々に、期待はずれだ、何かの間違いだと、マコトを責めた。よく頑張ったと、誰一人励ましの言葉など掛けてくれなかった。唯一それを言ってくれそうな人物は、今は行方不明である。  だが周りの人間の言い分もよく分かる。マコトという人物が不合格になるとは、誰も思っていなかったからだ。本命一本で他に滑り止めとして受験しなかったマコトは、一浪してでも必ず合格するようにと両親に言われた。  そして高校卒業と同時に家を出た。ひとりで勉強した方がはかどるだろうという、両親の意向のせいだ。  受験勉強の合間、マコトはずっと行方不明の兄を探していたのだ。僅かな時間をぬって探せる場所は全て探した。しかし高校生であるマコトにとって、人ひとり見つけ出すことは困難であった。そして受験に失敗した。  頼れる友人もいないマコトは、新しい部屋で独り膝を抱えた。周りの大人たちの過度な期待、その反動による強烈なバッシング。あまりにも理不尽だ。  何故自分がこんな目に遭わないといけないんだ。それもこれも、全て兄のせいだ。あいつのせいでマコトは追い込まれ、そして全てをなくした。  何もかも失ったマコトに残されたものは、兄に対する憎悪と歪んだ支配欲だった。

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