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七章 痛みと代償 4

 長く息を吐く。マコトはそのままタクミの上にもたれかかった。身体の角度が変わったことで、体内を犯す凶器の位置もずれ、タクミはわずかに喘いだ。薄く開いた口から扇情的な赤い舌をのぞかせる兄の姿に、一度放ったはずの性器は一回り大きくなった。 「は……っ、ひぁ……っ、ん……」 「タクミ……ッ」  マコトは顔を寄せ深い口づけを落とす。タクミもそれに応えるように舌を絡ませてきた。もっと兄と交じり合いたい。もっと一緒にいたい。もっと繋がっていたい。マコトはそれらの想いに蓋をして、愛しい兄に最後の告白をした。 「好きだよタクミ……愛して――」  だが、愛の言葉は途中で途切れた。背中に鋭い何かが突き刺さる。息が詰まった。痛い。熱い。苦しい。 「……どうして?」  目の前の兄の顔は笑っていた。 「ど……して……タクミ……?」  ゆっくりと首を後ろに回して状況を確認すると、ナイフのようなものが背中の左側に刺さっているのが見えた。突き刺さり方は浅いが、シャツにじわじわと血が滲み始めている。その持ち手はタクミがしっかりと握っていた。  この痛みが現実なのだと、マコトはとうてい信じることが出来ない。だがその思いを裏切るように、タクミはナイフを持つ手に力を込め、より深くまで刃をめり込ませた。 「……ッ」  肉を抉る不快な響きが体内を駆け巡る。弱り切った兄のどこにそんな力が残されていたのか、不思議でしょうがない。苦しい。痛い。痛い。傷つけられたのは肉体なのに、今は心の方が痛かった。  ――どうして? 何で?  こみ上げる疑問を口にしたいのに、身体は言うことを聞かない。次第に歯がガクガクと震え始めた。

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