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七章 痛みと代償 7

「さっさとどけ」  高崎はタクミに覆いかぶさるマコトの身体を引き起こし、コンクリートの床に打ち捨てた。挿入していた性器は既に萎えていたので、結合を解くのは簡単だった。  マコトはうずくまった状態のまま、何とか血を止めようと左手を背中に回して傷口を覆うが、それは無駄な努力だった。徐々に目がかすんでくる。しまいには身体を支えきれなくなって、マコトは手足を投げ出しそのまま俯せた。  視界の端で高崎がベッドに近付き、タクミの身体を労わるように抱き起す様子が映る。そのままベッドに腰掛けさせた後、高崎は何かを取り出し、それをタクミの首に宛がった。首輪と鎖とを繋ぐ南京錠の鍵だ。 「な……」  その鍵は壊したはず。確かにタクミの目の前でハンマーを使って叩き潰したはずだ。なのに、どうして?  吐息のような問い掛けが聞こえたのか、高崎は肩越しに振り返り、皮肉気な眼差しで言った。 「スペアを預けたのはお前だろう?」 「……ちが」  そんな鍵の存在なんて知らない。声を大にして否定したかったが、次第に呂律も回らなくなってきた。  その間にも高崎はスペアキーを使い、タクミを鎖から解放した。首輪はまだ嵌められたままだが、タクミはその解放感に浸り、それからマコトの血で汚れたベッドに身体を横たえ、そのまま糸が切れた人形のように深い眠りについた。  高崎はタクミが寝息を立てたのを確認すると、ゆっくりとした足取りで床に伏せるマコトの元へと歩み寄った。膝を折り、マコトと同じ目線まで顔を下げる。彼は既に虫の息だった。

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