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七章 痛みと代償 8

「これがお前たち兄弟の望んだ結末か?」  マコトは最後の気力を振り絞って高崎を睨み付ける。殺意の籠った眼差しだ。  あの日、カッターナイフを手に兄を殺そうとしていた憎悪の塊のような瞳が今、高崎に向けられている。 「あの時と同じだな」  獣のような瞳を見て、高崎は「面白い」と興味を持った。この男が破滅する様を、この目で見届けたいと思った。 「お前はタクミから全てを奪ったつもりだっただろうが……」  だから手を貸した。マコトの計画通りに裏から手を回し、金銭的な援助もした。 「奪ったところで何になる? もともと空っぽなお前に捧げたところで、お前自身満たされると本気で思っていたのか?」  結果は予想以上だ。憎み、愛した実の兄に刺される哀れな弟。誰がこんな筋書きを予想しただろうか。高崎は最後にマコトの耳元で囁いた。 「恨むならタクミではなく、お前自身を恨め」 「……」 「これは当然の報いだ。お前はタクミを壊した。その代償にお前はタクミに殺される。立派な痛み分けだ。そのリスクを考えぬほど、お前は愚かではないだろう」 「……」  マコトからの返事はなかった。高崎は嗤い、ベッドで眠るタクミへ近づいた。 「俺からの贈り物は気に入ってもらえたようだな」  タクミは幸せそうな顔をして眠っていた。数分前の自分の行いなど、すっかり忘れているのだろう。その緩み切った頬に高崎は薄ら寒い狂気を感じた。 「行こうか、タクミ」  ここまで来たら最後まで付き合ってやろう。高崎は優しい声色でそう声をかけ、タクミの身体を横抱きにし、監禁部屋を後にした。  了

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