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二章 優等生と脱落者 5

 地元の私立高校に通うようになったタクミは、進学を機に徐々に堕落していった。髪を金色に染め、両耳にピアスを空け、何日も家に帰らない日々が続いた。悪い仲間とつるむようになり、いわゆる〝不良〟と呼ばれる人間になっていた。  これらの行為はマコトから逃れようとしたタクミの考えだった。弟の中にある兄の虚像を根っこから消し去るつもりだった。  タクミの思惑は成功した。周りの人間はタクミに親不孝のレッテルを貼り、次第に避けるようになった。それは両親も例外ではなく、マコトをタクミから遠ざけようとし、やがて家族の中から兄の存在を消したのである。  やがてマコトも高校へ進学する頃には兄弟間の関わりは、ほぼ無くなっていた。この平穏な時がいつまでも続くと、タクミは信じていた。  それから二年後。タクミが大学二年生、マコトが高校三年生の時に、それは起こった。  大人たちから見放されたタクミだったが、頼れる仲間はたくさんいた。彼女との付き合いも順調だった。そんな中タクミは彼女と一緒にいるところを、マコトに見られたのである。あまりにも突然すぎる出会いに、お互い何事もなかったかのようにすれ違った。  その日タクミは彼女の家に泊まり、一夜を過ごした。次の日もそのまま過ごし、家族が寝入った頃合いを見計らって、タクミは帰宅した。実家のどこかにいるマコトに全神経を集中させていたため、両親の不在には気づかなかった。自室に戻り内側から鍵を閉め、タクミは眠りについた。  マコトがタクミの部屋に侵入したのは、それから数時間後のことである。

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