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aloud

「さて真宮ちゃん、今日は何の日でしょう」 目の前で、微笑みながら手を差し出す。 すると真宮は、煙草を咥えながらまじまじと見つめ、何事か考えている。 「お、そうだったな」 答えられないであろうと確信していたが、閃いたらしくジーンズをまさぐり、後ろ手に物入れをごそごそと探っている。 「ん」 程なくして差し出されれば、小さな包みを摘まんでおり、想定外の出来事に遭遇して真顔になる。 「何これ」 手の平にすっぽり収まるであろう物を、見下ろしながら暫し固まり、ようやく口にして顔を上げる。 「何ってホワイトデーだろ? お返し貰いに来たんじゃねえのかよ」 「は……?」 まさかの台詞に、口を開けど何にも言えなくなり、思いもよらぬ展開へと直面してしまう。 確かに用といえば、バレンタインのお返しを貰いに来たわけだが、始めからそのような事を期待してもいなければ勝手に奪うつもりでいたので、手渡されるなんて予期せぬ事態である。 「え……、マジで? 真宮ちゃんから俺に」 「お前以外に誰がいんだよ」 「まさかこうなるとは全く予想してなかったっつうか……頭大丈夫?」 「うるせえな、ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと受け取れ」 不愉快そうに眉を顰めるので、腑に落ちないながらも受け取り、かさりと音を立てたそれを見つめる。 「チョコにしては小さいんじゃねえの?」 「チョコじゃねえよ」 「じゃあ、何」 「気になるんなら見ろよ」 手にしていた煙草を咥えつつ、時おり紫煙を風に弄ばせて真宮が紡ぐ。 それもそうかとテープを剥がし、広げていった先に現れた代物を見つめ、次いで青年へと視線を注ぐ。 「ピアス……?」 「おう」 手の平を見つめれば、彼が選んでくれたのであろうピアスがあり、つい言葉を忘れて見入ってしまう。 「何にするか考えたら、お前の好み全然知らねえことに気付いた。でも菓子はねえなあと思って……、俺が選びきれねえしな。それがお前に似合いそうだった」 だから選んだ、と紡ぐ彼に反応出来なくなる。 預かり知らぬところで、此の身を想ってこうして選んでくれるだなんて、どういう風の吹き回しだろう。 その割には特別なラッピングなどされず、簡素に包まれているあたりが彼らしいとも言える。 「急に期待裏切ってくるのやめてくれない?」 お返しにかこつけて、その身に触れようとしていた予定が狂ってしまった。 「気に入らなかったか?」 「ンな事言ってねえんだけど」 「そうか。ならいい」 「別に……、こんな事してくれなくて良かったのに」 どんな顔をしたらいいか分からず、視線を泳がせつつ吐露する。 「チョコ美味かったからな。だからお返しだ」 そう言って微笑み、紫煙を燻らせる彼に暫し目を奪われた。 【END】

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