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きみはわるい子 ※
胸元を弄ると、今にも泣きそうな声音で訴えられ、腕へと手を添えてくる。
掴まれても、普段からは考えられない非力さであり、指を這わされても次第に快楽に抗えぬまま滑り落ちていく。
乳首を摘まみ、引っ張りながらぐにぐにと指の腹で擦れば、堪えきれない嬌声が眼下から零れる。
顔を背けても、視線から逃れようとしても悩ましい吐息は溢れ、しっかりと感じている様子が窺えた。
「気持ちいいの……? いつから乳首擦られんの好きになったんだっけ」
「ん……、ち、が……、ちが、う……好きじゃな……」
「嘘つきだなァ。こんなに膨れ上がってんのに、真宮ちゃんは認めないの? ココ擦るとさァ、スゲエやらしい顔するよ?」
「う……、く、はぁ、も……、そこ、やめ……」
「やだ。素直になんねえと、ず~っとこのままだぜ? つうかさァ、ここだけでイケちゃうんじゃないの?」
笑みを湛えながら起き上がり、上半身を跨いで腰を下ろすと、劣情を抑えきれぬ真宮の表情がよく見える。
精悍で、雄々しい青年の印象は掻き消え、今や淫らな声を上げながら物欲しげな眼差しを向けている。
滴る唾液を拭おうともせず、汗ばむ額から濡れた髪がはらりと落ち、誰にも想像すら出来ないであろう姿を晒している。
「はぁ……、い、やだ……、むり……」
「そんな顔して無理とか。分かってるくせに」
両の尖りを摘まみ、指の腹で擦り合わせながら緩やかに揉むと、弱々しくもするりと腕を掴まれる。
まるで飾りのように、手首へと指を這わせては遠慮がちに撫でるばかりであり、初めから阻めやしないと分かりきっている。
「何でも言うこと聞いてやると思ったら大間違い。俺はまだ納得してねえんだからな」
カリ、と乳房を軽く引っ掻けば、鋭い刺激ですらもやがて快楽へとすり替わり、無防備に開かれた唇からは艶かしく舌が覗いている。
逃れようもなく、昂りを抑えられぬ様相がありありと映り、いじらしい彼をもっといじめてやりたい衝動が果てもなくせり上がってくる。
「ん……、なに、が……」
「全部」
「はぁ、あ……、い、わなきゃ……、わかんねえ、ぅ」
「言わなくても分かれよ。つうか……、何回も言っただろ」
「ん……? あ、も……、そこ、揉むな……、はぁ、しつけえ……」
「感じてんだからいいじゃん」
「ん、く……、だ、れの……せいで……」
執拗に胸元を責めると、いい加減にしろといわんばかりに叩かれるも撫でられているようなものであり、何だかんだと口では拒みながらも情欲に塗れた吐息が溢れている。
「俺のせい……?」
小首を傾げ、惑わすように猫なで声で視線を捧げる。
指先で弄ぶ度に、吐息を漏らしながらも愛撫に耐え、彼は往生際悪く身動いで声を抑えている。
「はぁ……、ん、お……まえが……、さわる、から……」
「俺だけじゃねえんだろ……」
「ん……、お、まえだけに、きまって……、う」
「信用出来ねえ、こんな酔っ払ってるくせに。俺なら絶対やる」
「おまえと……、いっしょに、すん、な……はぁ、は……」
む、と苛立ちを募らせて押し潰せば、彼は咄嗟に目蓋を下ろして声を殺す。
不意の刺激に眉根を寄せるも、痛みだけではない感覚へとすぐにも支配され、嫌がっているようにはとても見えない。
「そんなの分かんねえじゃん……。お前鈍いし、うかつだし、隙だらけだし」
一言紡げば止まらず、地団駄を踏む子供のように不満を連ね、拗ねた表情を浮かべて手を止めてしまう。
こんな事を言うつもりではなかったのに、気付けば我慢がきかなくなっていた。
自分でも嫌になるが、理解されたい幼子が時おり顔を出しては、こうして余計な事を仕出かしていく。
「ぜん……」
「なに……」
「こっち……」
「は? いいって」
「はやく……」
すっかり不貞腐れていると、呼ばれた気がしてつい顔を上げてしまう。
すると真宮が手招きしており、突っぱねようとするもしつこく呼ばれ、素直に従うのも癪で躊躇する。
しかし、顔を背けてだんまりを決め込んでも、彼は一向に諦めてくれない。
聞こえない振りをしても、間を置いてからまた名を紡がれ、応じるまできっとやめないのであろう。
酔っ払っても頑固なところは変わんねえのな……。
寧ろ素面の時よりも増しているような気がする。
それはそうだ、大抵は彼が溜め息をつきながらも引き下がり、譲ってくれているのだから。
「はいはい、聞こえてるって……。お前もしつけえよな」
ハァ、と諦めの溜め息をついて、視線を投げ掛ける。
思わぬ形で、如何に自分が日頃から気に掛けられ、見守られているかを悟り、何だかばつが悪くなる。
自分が引っ張っているようで、容赦されている。
途端に顔を合わせにくくなるも、ようやく呼び掛けに応じて近付き、見下ろしながら顔の側へと手を付く。
「なに」
「ん……、なんだっけ……」
「ハァ? あれだけ呼んどいて?」
「機嫌……、なおったか……?」
「なおんねえ」
「やっぱ怒ってた……」
「うるせえ、お前のせいだ」
「ん~……、そうか……。妬いてたんだな……」
納得、という口振りで、ふわふわと宙に浮いているかのような言動ながらも真宮が呟く。
放っておいたら眠りそうなくせに、こんな時ばかりやけに鋭くて嫌になる。
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