33 / 53
きみはわるい子 ※
「そう、だよな……。ぜん……」
微笑まれて、直ぐ様反論するつもりであった。
しかし、喉元までせり上がりながら紡げず、柄にもなく躊躇してしまう。
咄嗟に言い掛けて、悩むような表情を浮かべて、いつまでも言葉にならない。
まるで伝えるべき想いは別にあるとでも言うように、暫しの時を静止する。
中途半端に唇を開いたまま、一度は強引に投げ掛けようとするも、結局は言えないまま微かな息遣いだけが漏れていく。
いつものように適当な軽口でかわしてしまえばいいのに、出来なかった。
葛藤に揺れ動くも、視線を合わせていられなくなるも、やがて観念する。
「悪いのかよ……」
言ってから猛烈に後悔するも、もう遅い。
やっとの思いで絞り出して、我ながら嫌気が差しても今更であり、今夜は彼に振り回されてばかりいる。
「ふ……」
「おい、何だ今の。笑っただろ……」
「ん~……? たまにはかわいいとこも、あるんだよなあって……」
「バカにしてやがるコイツ」
「かわいがってるだけ、ん……まだ話して、だろ……」
「知らねえ」
からかわれているような気がして面白くなく、首筋へと舌を這わせて黙らせる。
ちゅ、と時おり音を立てながら口付け、たっぷりと唾液を孕ませながら舐め、甘やかな欲望を再び呼び覚まさせていく。
「ん、おい……、ん、んぅ……」
余計な事を言われる前に唇を重ね、舌を捩じ込む。
何を言おうとしていたかなんて忘れさせるように、丹念に口内を愛撫していく。
息を潜める舌を捕らえ、粘膜を触れ合わせながら熱情を交わし、ぴちゃりと唾液がいやらしく音を立てる。
ん、と色艶を孕んだ声が聞こえ、情欲に駆り立てられるまま口付けし、やがて大人しく舌を押し付けてくる。
何度も何度も絡ませて、次第に唾液が溢れていこうとも構わず、甘ったるいひとときが流れていく。
胸元を探り当てて再度揉めば、一際感じ入るような吐息が聞こえてくる。
それを逃すはずもなく、尖りを指で挟みながら擦り、擽るような刺激を与える。
「ん、はぁっ、は……、あ……、ま、た……、おまえ……」
「そろそろ次にいってあげるから安心してよ」
「ん……、いちばん、信用……、できな……、ん」
額へと口付けてから離れ、一気に下腹部を目指す。
熟れた胸元からも離れ、下肢を見つめれば昂りの度合いが窺え、満足そうに笑みを湛える。
「まだ何にもしてねえのに、ずっと待ってたんだ……? ごめんね」
冗談めかして屹立を撫でれば、生地に阻まれようとも熱が伝わってくる。
不意の接触で腰を引こうとしたので、逃れられぬよう捕まえながらベルトを引き抜き、欲望を一気に暴いていく。
下穿きごと下ろせば、外気へと晒された自身がそそり立ち、淫猥に脈を打つ。
先端からは、すでにふしだらな白濁で溢れ、多大なる劣情を物語っている。
間近で眺めれば、時おり物欲しそうにひくつき、更なる蜜を滴らせる。
何にもしないでいると、起き上がろうとする気配を感じ、鈴口へと触れてみる。
人差し指で馴染ませるように円を描きながら、淫らな白濁を塗り付ける。
にち、と時おり音が漏れ、微かな刺激を搔き集めるように、自身からはとめどなく卑しい欲望が滲んでは流れていく。
「そんなに嬉しいの? ちょっと触っただけなのにスゲエ出てきた」
「ん……、ちが」
「違うの? 気持ち良くねえのによだれ垂らしちゃうんだァ。こんなに零れてんのにおかしいね」
掬い上げるように親指で拭うと、絶えず白濁が溢れて自身をけがす。
意味ねえじゃん、と静かに笑みつつ、物足りないであろう屹立から離れ、手の平へと唾液を落とす。
そうして自身から下り、すぼまりへと控え目に触れ、指先を僅かに喰らわせていく。
「ん……、なに……」
「大丈夫だって。言ったでしょ? 安心してって」
「だから……、そ、れ……」
「はいはい、起き上がろうとしないの。逃げんのもナシ。やるって言ってたじゃん」
唾液と、白濁に塗れた指を押し当て、弧を描くように撫でながら広げていく。
指先を孕ませ、抜いては差してを繰り返し、少しずつ馴染ませて深度を増す。
ん、と堪えるような吐息が聞こえ、触れる度に何らかの反応を示している。
酔って理性が緩んでいる割には、今のところ奥ゆかしく息を潜めており、敷布を乱して控え目に身動ぐ。
僅かな刺激でさえも、貪欲に受け入れて快楽へとすり替え、触れられずとも自身は一向に萎えていない。
寧ろ感極まるように、だらだらとふしだらな証を垂れ流して咽び泣き、腰が揺れる度に身を震わせている。
「ん……、ぜん……」
「なあに」
「あ……、なん、で……」
「何か気になる……?」
わざとらしく聞き返し、徐々に受け入れさせるべくすぼまりを広げていく。
言いたい事は分かっており、本当は自身へと触れられたくて仕方がないのであろう。
しかし分からない振りをして、ゆっくりと押し広げていきながら育て、より奥へと指が入り込んでいく。
「はぁ、あ……、ぅ」
「全然ココだけで満足そうじゃん。さっきよりもえっちなの出てるよ?」
「ち、が……、それ……、いやだ……」
「え~、何処が? 自分で状況分かってんの? スゲエ足広げちゃってんじゃん。もっと、て……」
太股を擦り、貞淑を装う青年へと思い知らせる。
ともだちにシェアしよう!