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きみはわるい子 ※
「一人に絞 るなんて、あの頃は有り得なかったのに。俺が何人とヤッてたか知ってる? て自分でも分かんねえや……。それが今や真宮ちゃんだけとか、当時の俺に言っても信じてもらえないだろうね。きっと」
寝台に腰掛けながら、薄暗い足下を見つめる。
床からは、ひんやりとした感覚が裸足へと伝わり、徐々に体温と馴染んで気にならなくなっていく。
片方は膝へ、もう一方はすべらかな敷布を押さえ付けていた手へと、先程から彼の指が触れている。
温もりを重ねられ、それだけで安心して振り払えなくなり、然して面白くもない独り言を呟いてしまう。
誰かなんていらなかった。
でも、誰かがいてくれないと押し潰されそうだった。
しがらみから一時でも解き放たれるには、それが一番簡単な逃げ道だったから。
「それが今では全部関係切ったとかすごくない? ホントにお前しか……」
頼りなげな声音で、彼の手へと控え目に指を絡める。
感触を確かめるようにやんわりと掴めば、指を擦り寄せて反応を示される。
人肌を触れ合わせ、ゆっくりと指を絡めながら、物言わぬ時間が流れていく。
心地好い静寂に抱かれ、時おり語り掛けるように肌を撫で、青年の様子を窺う。
「お前が居なくなったら……、俺は」
暗がりを眺めながら、虚ろな心情を吐露してしまう。
身勝手に振り回しても、その実何処かでは怯えている。
いつか背を向けて、目の前から消えてしまうのではないかと過っては、暗鬱とした感情に占拠される。
そんな薄情な奴じゃない、……俺とは違う。
「つうか……、俺が裏切らないか心配するほうが先か。お前は……、居てくれるんだろうし」
自分でも何を言ってるんだろう、とは思いつつも止められず、頭の中を整理するように紡いでいく。
全てを委ねるのが怖くて、逃げてきたのは俺のほうだ。
理解されたいのに恐れて、側に居てほしいのに突き放して、親しくなるにつれて自分を追い詰めた。
彼の手を握りながら、穏やかな温かみを味わう。
らしくない、とは分かっていても告げたくて、薄暗闇に背中を押される。
今はちゃんと、向き合えているのだということを伝えたかった。
「……弱くてもいいのか、別に。もう……」
闇夜へと視線を滑らせて、密やかに息を吐く。
虚勢を張る必要なんて、もう何処にもないのだから。
指を擦っていた手を止め、青年の名を紡ぐ。
呟いたつもりが、静寂にはやけに大きく響き、言ってから間を空けてしまう。
しかしそれにはもう一つ理由があり、振り返ったまま視線を逸らせないでいる。
「は……? 寝てる? まさか?」
思い返せば繋いでいた手が動かなくなり、いつからか反応を示さなくなっていた。
意識を注げば微かに寝息が聞こえ、信じられない光景に目を疑う。
「寝る……、か? 普通……、この空気で」
笑うしかなくなり、こめかみがひくついている。
酔ってるし……? ベッドだし? イッたし? 静かだからそのまま寝たって……?
ハァ、と溜め息をつきながら脱力し、元からこういう奴だからと思い直す。
何も聞かれていなかったという安堵と、ささやかな期待を裏切られたような気持ちに挟まれつつ、足を浮かせて再び寝台に上がる。
「大事なところを聞いてねえとか、俺もうどうしたらいいわけ……?」
「ん……」
「真宮……。寝ててもいいけど、まだ終わってないんだよね」
「ん、はぁ……」
覆い被さってから首筋に顔をうずめ、舌を這わせる。
口付けてから、丹念に唾液を孕ませながら表面を舐めると、微かに声が漏れる。
軽く吸い付いて、音を立ててまた口付け、円を描くように舌先を触れさせる。
首を弄ぶ傍らで、胸元へと忍び寄った手が乳房を捏ね回し、ぐにぐにと柔らかなそれは容易く潰れてしまう。
「まだ寝るには早いんじゃねえの……?」
「はぁ、あ……」
「寝ててもやっぱ、乳首ぐりぐりされると気持ちいいの? こうやって捏ねたり」
「ん……、あ」
「爪立てても気持ちいいんだ。えっちだね」
耳元で語り掛けながら、胸元の尖りを弄ぶ。
何をしても感じてしまうようで、彼の唇からは切ない喘ぎが零れていく。
やがて首筋から鎖骨、胸へと舌を這わせて下り、一方の乳首を口に含みながら吸い付いては唾液を纏わす。
それだけで頭上からは甘ったるい声が零れ、眠りに就いても淫らに感じていることが窺える。
「はぁ、は……、ん」
「好き……? コレ」
「あ……」
「へえ……、そっか」
過敏に反応を示され、胸元から顔を上げて微笑む。
次いで身を起こし、下腹部へと腕を伸ばして触れ、じっくりと解した一点を確かめる。
くちゅ、と音を立てて粘液が纏わりつき、ひくついたすぼまりは物欲しそうに淫らに広がっている。
浅い部分を指で掻き混ぜてから引き抜き、太股を撫でながら体勢を整えていき、自身へと緩く刺激を加えてからそこへ宛がう。
今のところ目覚めず、感じ入る声を漏らしてはいても、目蓋は下ろされている。
一瞥してから弧を描くように撫で、徐々に自身を食ませ、ずぶずぶと沈み込ませていくとこれまでで一番情感を孕んだ声が聞こえてくる。
「あ、あぁ……」
「ん……、まだ寝てんの? そんな声出してさ」
「ん、あ……」
「構ってくんねえならそれでもいいけど、俺の前で暢気に寝るなんていい度胸だよな」
ふ、と微笑みながら腰を押し付け、より深みへと自身を咥え込ませる。
初めは緩やかに律動させながら行き来すると、すぐにも甘ったるい声が聞こえてくる。
無防備な息遣いから嬌声が溢れ、敷布を掴みながら艶かしく身動ぎ、素直に興奮を表して乱れていく。
引き抜いてから一気に押し込むと、あまりにも強い快楽に翻弄されてだらしなく口を開け、次から次へといやらしい声が零れる。
「あ、はぁ、は……、あ、ん」
「いいところ擦られてるって、ちゃんと分かるんだ」
「あっ、う……、んん、はぁ、あ」
「真宮……、分かる? 全部入ってんの」
「ん、あ……、はぁ、あっ……、な、に……」
揺さぶられ、力ずくで快楽を植え付けられていくうちに、うっすらと目を開けた真宮が声を上げるも、未だ状況は分かっていない。
「おはよ。やっと起きた……? 俺がイクまで寝てたらどうしようかと思っちゃった」
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