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きみはわるい子 ※
手を差し伸べ、頬に触れながら人差し指で擦ると、ゆっくりと瞬きしてから蕩けた視線を向けられる。
熱に浮かされた目尻からは涙が溢れ、劣情で昂るままに頬は上気し、縋るような声を漏らしながら艶かしく舌を覗かせている。
熱情を感じつつ、今にも零れそうな涙を指で掬い上げると、目を閉じてか細い声だけが聞こえてくる。
汗ばむ肌を撫で、額へと無造作に掛かる髪を払い、端正な顔立ちを眺める。
緩慢な動きに合わせて、半開きの唇からは甘ったるい吐息が零れ、眉根を寄せて悦楽に酔いしれている。
鋭く、何者をも打ち負かす双眸は、今は閉ざされてしっとりと睫毛を濡らし、普段の強さは微塵も感じられない。
「はあ、あ……」
控え目な息遣いを耳にしながら、おもむろに額へと口付けをする。
静かに離れると、少しずつ真宮が目蓋を開き、やがて視線を向けてくる。
何を言うでもなく、顔を近付けて唇を重ねれば舌が触れ合い、それだけで情欲が激しさを増していく。
舌を絡ませ、唾液を混ぜ合わせ、ふしだらな欲望を隠しきれない息遣いが、どちらからともなく漏れては鼓膜を擽って煽られる。
「はぁ、ん……」
「素直じゃん。いつもはキスすら渋るもんね、真宮ちゃんは」
「はぁ、あ……、き、もちいい……」
「どこが……?」
「あ……、な、か……」
「え~、キスは?」
「ん……、はぁ、キ、スも……、すき」
「ホントに? 言わされてない?」
「はぁ、は……、ん、いい……、いい、から……」
「そっか」
いとおしそうに微笑み、下腹部へと意識を注ぐ。
緩やかな動きから徐々に苛烈に打ち付けていき、呼応するように真宮の声色も艶を帯びていく。
一方の手で敷布を掴み、幾重にも皺を刻ませながら握り締め、時おり喉元を晒して獰猛な快楽に堪え忍ぶ。
欲望に塗れた汗を光らせ、首筋へと唇を重ねれば一際甘ったるい声が零れ、抗い難い劣情にどろどろに溶かされていく。
「は、あぁっ……、ん、う……、あ、きもちい……、そこ」
「うわ、スゲエ勃ってるじゃん。さっきあんなにイッたのに。またこんなによだれ垂らしてるなんてわるい子」
不埒な欲望で膨らんだそれが、内部を抉る度にだらしなく揺れて白濁を溢す。
指先で粘液を塗りたくりながら先端を撫で回せば、無意識であろう腰をくねらせて愛撫を享受する。
改めて腰を打ち付ければ、肌が触れ合う音と共に粘膜がぐちゅりと絡み付き、むず痒いような感覚が少しずつせり上がってくる。
熱量を行き来させる度に快楽が肥大し、蕩けそうな誘惑にくるまれて白濁が湧き出し、じんわりと痺れるような悦びが背筋を駆け抜けていく。
「ホントに俺だけ? 隠れて悪いことしてない?」
「あっ、はぁ、う……、し、てな……あっ」
独り占めしたくてたまらない。
本当は誰にも触れさせず、宝物は隠していたい。
でも、そんな事をしたら悲しませるから、何でもない振りをして見送る。
「あ……、い、やだ」
「何が?」
「はぁ、まだ……、もっと」
「こんなに心配してんのに酔って帰ってくるし、もうやめちゃおっかなァ」
「んぅ、あ……、やだ……、ぜん……」
「反省してる……?」
「ん、ん……」
「じゃあ、ごめんなさいは……?」
「はぁ、あ……、ごめ、なさ……」
「え~? なんて?」
「あっ……、ごめ……、ぜん、ぜん……」
「……ごめん。妬いてるだけだから」
誰もが惹かれてしまうからこそ好きになったのだ。
暫し動きを止めれば、すっかり蕩けた青年に求められ、つい意地悪をしてしまう。
そんな事をしている余裕なんて、とうにない。
それでも言わせたくて、確かめずにはいられなくて、今だけは自分だけを見つめている姿を脳裏へと焼き付けていく。
「ごめん。真宮……」
「あ、あぁっ、なか……、こすれ、る……」
「嬉しそうな声出しちゃって。俺のちんぽそんなに好きなの? どこ擦ってあげたら喜ぶんだっけ?」
「あっ、んん……、それ、はぁ、それ……、いい、きもちい……」
「ん……、ハァ、そんないいの? 締め付けやがって……」
「あっ、ああぁ……、もっと、そこ……、ぐりぐりって、して……」
「はいはい。どうせ言うこと聞いちゃうからね、俺も」
「あ、はぁ、あ……、あたる、そこ……、それ、いいっ、あっ、あっ、ぜん、ぜ……」
「呼び過ぎ……、普段からそれくらい可愛く呼んでくれたらいいのにね」
仄かに照れるも、悪い気なんてするはずもなく、奥まで呑み込ませた自身を引き抜いて、問答無用でずぶずぶと押し込んでいく。
いいところばかりを当てれば、無防備な声が淫らに縋り付き、従順に悶えながら愉楽 を訴えている。
唇を重ねれば吸い付いて、糸を引き合っていやらしく舌を踊らせ、焼け付くような劣情を分かち合う。
内部へと自身を押し込む度に彼が乱れ、やがてやんわりと腕を掴まれ、感触を確かめるように撫でられる。
「あっ、はぁ、いくっ……、いっちゃ……、でる……」
「また漏らしちゃうの? だらしないなァ、真宮ちゃんは」
「あ、うっ……、んん、き、もちいい、から……、もう、でる……、でてるっ……」
「ホントだ。どろどろじゃん。触ってないのにね」
すでに欲を溢れさせ、快楽に打ち震える自身は今にも決壊しそうであり、真宮の唇からは呂律の回らない言葉ばかりが聞こえてくる。
ずぶ、と咥え込ませれば素直に感じ入り、譫言のように名前を呼ばれる。
激情に身を任せて熱情を穿てば、髪を振り乱しながら彼がやがて限界へと達し、一層欲深な表情を晒して力尽きていく。
「あ、あぁっ、い、い……、でる……、で……あ、ああぁっ、んん……」
余韻に痺れながらびゅるびゅると白濁を噴き出させ、腹部へといやらしく撒き散らして真宮が脱力する。
忙しなく呼吸を繰り返し、ぼんやりと何処か遠くを見つめ、物言えぬ代わりに下腹部からはどくどくとふしだらな欲望を次から次へと溢れさせている。
どれだけ身体を汚しても最早気にならず、真宮といえば力なく横たわったまま口を開き、抱えきれない情欲に浸りながら話すことも出来ないでいる。
「は……、はぁ、あ……」
「わけ分かんなくなっちゃった? 休むにはまだ早ェよ?」
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