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ねこといっしょ
「あのさァ、いつまでやってんの?」
不意に背後から抱き締められ、溜め息混じりに言葉を掛けられる。
「コイツが飽きるまでだな」
「つうかそいついつまで居座んの? 今日で何日目だよ」
「まだ三日目だろ。来週末まではいるからな」
「ハァ? 今すぐ返して来い」
「ンなこと出来るわけねえだろ。まったく、何が不満なんだよ。なあ?」
膝の上で寝転がる猫と戯れながら、不満そうな漸 をよそに語り掛ける。
指先で顎を撫でてやると、気持ち良さそうに目を閉じてごろごろと喉を鳴らし、甘えた様子で寛いでいる。
めちゃくちゃかわいいよなあ、コイツ。
預かってほしいと頼まれた時は不安であったが、いざ迎えてみれば初めは警戒されたものの徐々に慣れ、今では自分の家のようにのんびりと暮らしている。
リラックスしてもらえて大変喜ばしいが、猫がやって来てからどうしてか漸の機嫌が悪くなり、口を開けば返してこいと不満が止まらないでいるようだ。
「お前が猫好きなんて意外」
「そうでもねえんだけどな。でも一緒に暮らしてみると情がわくし、甘えられるとやっぱ嬉しいもんだよな」
「俺には割と敵意むき出しだけど、そいつ」
「危ねえやつってちゃんと分かってんだなあ。えらいえらい」
「マジでそいつ追い出そう」
「やめろって。お前がそんなだからなつかねえんだろ? こんなにかわいいのに」
手触りのいい毛並みに指を添えながら、今にも寝てしまいそうな猫を眺める。
一方で漸といえば、肩に顎を乗せてのし掛かり、腹部へと腕をまわしているので身動きがとれず、おまけに重くて鬱陶しい。
傍らでぶつくさと文句を言いつつ、時おり安らいでる猫の身体を指で押し込むので、そういうことするから嫌がられるんだろうがと窘 めてやめさせる。
「別になつかれなくていいし、こんな奴」
「相性いいと思うんだけどなあ、お前ら」
「は? どこが。もうろくしてんのかよ」
「よく仲良く一緒に寝てんだろ。似た者同士だよなあ。あ、だから気に食わねえのか?」
「一緒にしないでくれる? マジで勘弁して」
「拗ねんなよ、いいじゃねえか。もっと仲良くすればいいのにな。て……、おい。何やってんだ、お前。どさくさに紛れて」
咄嗟に腕を掴むも、すでに両の手が衣服の下へと潜り込んでおり、どういうつもりだと顔を向ける。
「お前が悪い」
「ハァ? なんだよ、急に」
「猫ばっか構ってる、お前が悪い。俺は俺で勝手に遊ぶからほっといて」
「ほっといてって……、どんな遊びだ、これは!」
いじけた様子で宣言したかと思えば、肌へと触れた手が上に移動していく。
子供っぽい言動とは裏腹ないやらしい手付きに、好きにさせたら大変なことになるとは重々承知しているので、今すぐやめさせようと腕を引っ張る。
しかし懸命に防いでいると、奉仕がおろそかになった猫から早く撫でろといわんばかりにじっと見つめられ、こういう主張の激しいところもそっくりだよなと苦笑いが込み上げる。
「構ってほしいなら素直にそう言え! めんどくせえな!」
「構って。そいつばっかずるい。俺だって真宮ちゃんと遊びたいのに」
「言葉と手付きが伴ってねえんだよなあ……。おい、どこ揉んで……あ~猫に蹴られただろうが今撫でるから待て猫! お前も待て!!」
「待つわけねえじゃん。おい、猫。その調子で真宮の気ィ引いとけ」
【END】
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