44 / 53

その眼差しは 1※

「は~……、あっつ」 真夜中に、眠りに就くべく寝台で横たわっていると、背後から溜め息混じりに声がする。 「お前が引っ付いてるからだろ。離れろよ」 目を閉じたまま、先程から腰へと纏わり付く腕に触れるも、一向に離れる気配はない。 それどころか、感触を確かめるようにあてもなく指を滑らせ、やがて徐々に衣服の下へ潜り込んでいく。 「おい、何やってんだ」 すかさず腕を掴めば動きを止めるも、もう一方の手が悪事を引き継ぐ。 腹部を撫でながらいやらしく指を彷徨わせ、どんどん服を捲り上げられてたまらず目を開けると、余計な事ばかりする彼へ抗議する。 「だって暑くて眠れねえもん」 「俺はお前のせいで寝れねえんだよ」 「真宮ちゃんはァ、俺より先に寝ちゃダメ」 「お前が寝入るまで見張っとけって? ふざけんな。そんなに暑けりゃエアコン入れりゃいいだろ」 やれやれ、とは思いながらも空調を入れるべく、リモコンを探そうとする。 しかし身体を起こそうとしたら抱き寄せられ、がっちりと密着されてまともに動けなくなる。 何のつもりだと言い掛ければ、感じやすい首筋へと口付けが降りかかり、次いでねっとりと舌を這わされる。 思わぬ刺激に隙が生じ、それを見逃さぬ彼の手が胸元を這い回ると、すぐにも尖りを探し当てられてしまう。 「お前に寝る気はねえのか」 「眠れないから、真宮ちゃんに寝かし付けてもらおうと思って」 「噛み合ってねえんだよなあ……」 「でもさァ、ちゃんと感じてるよ? ここ。コリコリして固くなってきた」 抗おうと腕を掴んでも、侵攻を阻めずに勝手を許してしまい、執拗に乳房を嬲られる。 押し潰すように摘まんだかと思えば、指を擦り合わせて尖りを捏ね回し、首筋へと何度も口付けを施される。 舌を這わされる度にぞくぞくと快感が走り抜け、それだけでも抵抗する力を奪われてしまい、胸元を弄ぶ我が侭な手を止められない。 触れ合う度に暑くなって、じんわりと額に汗が浮かび、少しずつ淫らな熱に押し流されていく。 「ん、やめろって……。触んな。寝ろよ」 「そういう真宮ちゃんは今更寝れんの? 乳首勃ってきたじゃん。分かる?」 「お前がしつこく弄るからだろ」 「気持ちいいからでしょ? お前おっぱい触られんの好きじゃん」 「好きになった覚えはねえ」 「そんなこと言って、身体は正直なんだけどなァ。例えばココとか」 いつの間にか下肢へと滑り落ちていた手が、熱を孕み始めていたそれへと触れる。 スウェットの上から自身を握られ、やんわりと揉まれれば仄かな刺激だけが生じ、快感を得るには物足りなさが募る。 寧ろ快楽を追い求めて更なる劣情が込み上げ、これ以上の勝手を阻みたい気持ちとは裏腹に、身体は貪婪(どんらん)な時間を貪り始めていく。 「触っていい……? ねえ、真宮。ここ」 不意に耳元で囁かれ、生地の上から下腹部を撫で回しながら、こんな時に限ってお伺いを立ててくる。 普段は何を言ったところで押し切るくせに、こういう時ばかり欲望を見透かすように猫なで声を上げ、観念しろと言いたげに誘惑してくる。 身を捩っても、一方の手には未だ乳房を弄られており、僅かな感触ですら今や過敏に拾い上げてしまう。 ぷくりと起立して、快楽の波に呑まれてすっかりと熟れ、指先が微かに触れるだけでも異常な程に感じてしまい、じんわりとした熱を纏っている。 「お、まえ……、いい加減にしろ」 「何が? 焦らさずにとっとと触ってほしいって?」 「ちがう……」 「なら、なあに? とても眠れるようには思えねえんだけど。だってさァ、勃ってるじゃん。乳首触っただけなのに」 「それはお前が……」 「俺が触るから気持ち良くなっちゃったの? かわいい」 「テメ調子乗んな」 「強情だよなァ。素直に触ってっておねだりしたら話が早ェのに」 「俺のせいみてえに言うな」

ともだちにシェアしよう!